東京高等裁判所 昭和28年(う)4031号 判決
被告人 陳龍範
〔抄 録〕
次に職権を以て調査するに、原判決は法令の適用として銃砲刀剣類等所持取締令第二十六条第二号第二条、覚せい剤取締法第四十一条第一項第二号、第十四条第一項、刑法第二百四条、第五十六条第五十七条、第四十五条前段、第四十七条、第十条、第十四条、第四十八条第一項、第二十一条、第十八条、第十九条、刑事訴訟法第百八十一条第一項を掲げているのであるが、銃砲刀剣類等所持取締令第二十六条第二号とあるのは前記のごとく同条第一号の誤記であるとしても、同令第二十六条第一号所定の刑は三年以下の懲役又は五万円以下の罰金と定められておるにかかわらず原判決はそのいずれを選択したかを明らかにせず、また覚せい剤取締法第四十一条第一項第二号の刑も三年以下の懲役又は五万円以下の罰金と、刑法第二百四条の刑も十年以下の懲役又は五万円以下の罰金若くは科料(罰金及び科料の額については罰金等臨時措置法第三条、同法第二条第二項により罰金の額は二万五千円、科料は五円以上千円未満とせられている)と各定められているにかかわらず、これまたそのいずれを選択したかを明らかにしないのであるから、前記刑法第五十六条、第五十七条により累犯加重をした刑は以上三個の犯罪につきそのいずれの刑に加重したかを知ることを得ないのである。もつとも原判決は次に併合罪の加重をするに当り刑法第四十七条、第十条の外同法第十四条を適用しているところよりみれば懲役十年以下の傷害罪については懲役刑を選択したことが窺われるから、他の二罪につき一つは懲役刑、他は罰金刑を選択したものとみなければならないのであるが、果して主文において言い渡した罰金刑はそのいずれについてこれを選択して処断したものかを知ることができないのである。刑事訴訟法第三百三十五条第一項の規定により法令の適用を示す場合には、単に罰条を列挙するのみで主文の刑のよつて来る所以のものがおのずから諒解せられる場合は格別、然らざる場合においては単に罰条を列挙するのみでは同法条の要求する法令の適用を示したものということができないものといわなければならない。されば本件については、原判決は以上のごとく単に罰条を列挙するのみで主文の刑のよつて来る理由を明らかにしていないのであるから結局原判決は判決に理由を付しない違法があるものといわなければならない。畢竟原判決は爾余の論旨につき判断をなすまでもなく、この点において破棄を免れない。
註 原判決の主文は「被告人を懲役六月及び罰金五千円に処する。但し、未決勾留日数中参拾日を右懲役刑に算入する。右の罰金を完納することができないときは、金弐百円と一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。