東京高等裁判所 昭和28年(う)4072号 判決
被告人 北川近太郎
〔抄 録〕
弁護人の控訴趣意について。
よつて按ずるに原判決は罪となるべき事実の第二として「被告人は昭和二十八年十月九日午前八時頃千葉市今井町六百五十六番地大森道夫方で同人に対して他に売却する意思がないのに「今井荘の友達の所に行つてくるんだが一寸自転車を貸して呉れ」と申し向け同人をしてその旨誤信させ即時同所で同人から同人所有の中古自転車一台(価格約金一万六千五百円)を貸借名下に交付させて騙取した」旨判示していることは論旨の指摘するとおりであり、右の事実摘示によつては詐欺罪の成立に必要な被告人に詐欺の犯意の存したことは毫もうかがうことはできないといわざるを得ない。それにもかかわらず原審は右の事実を詐欺罪をもつて問擬していることはその適用法令と照らし合わせてみれば極めて明白であるから原判決はひつきよう判決に理由を附しない違法があるものと言うべく論旨は理由があり原判決はこの点において破棄を免れない。