東京高等裁判所 昭和28年(う)4144号 判決
被告人 品田正夫 外
〔抄 録〕
原判決中被告人品田正夫に関する部分の事実誤認の主張について。
公職選挙法第二百二十一条第一項第一号にいわゆる当選を得若しくは得しめ又は得しめない目的で選挙人又は選挙運動者に金銭又は物品を供与したときとあるは、右所定の目的で金銭又は物品を交付してその所有権を取得させた場合のことを言い、従つて、これが交付を受けた者において、同条第四号所定の罪が成立するがためには、右供与の目的を認識しながらその金品を自己の所有とする意思で交付を受けて、その所有権を取得した場合でなければならないが、本件を記録によつて考察するのに、被告人が、原判示金員を受け取つた際、たとえ一応、その受領を拒絶した事実があつても、若しこれを自己の所有として利得する意思がなかつたとすれば、その際、その受領を断乎拒否できたばかりでなく、その後二十数日後事件が発覚するまでの間郵便をもつて高島に返送することができた筈であつて、被告人においてその間、これが金員を蔵匿して費消するところがなかつたとするも、到底被告人において、これが金員を自己の所有とする意思で交付を受けて、その所有権を取得し、前示にいわゆる供与を受けたものであることを否定するを得ない。これを要するに、被告人品田正夫に関する原判示事実は、原判決挙示の証拠によつて優にこれを認めることができ、記録を精査するも、原判決には、判決に影響を及ぼすことの明らかな事実の誤認はなく、原審が、被告人品田正夫の所為につき公職選挙法第二百二十一条第一項第四号の罪に問うたことは正当である。所論は、原審が、事実の認定について、その専ら有する権限に基づいて事理、経験の法則によつて判断したところを非難するに帰し採用するに由がない。論旨は理由がない。