東京高等裁判所 昭和28年(て)9号 決定
然るに当裁判所が昭和二八年三月三日なした勾留更新決定の記載によれば、裁判官中浜辰男がこれに関与しているのであるが、同裁判官は前審たる第一審裁判官としてその判決をなした判事であるから、茲に忌避の申立をする次第であると謂うにある。仍つて本件記録を精査するに、判事中浜辰男が被告人に対する本件第一審判決をしていること、及び同判事が当審における被告人に対する勾留更新決定に関与していることいずれも洵に明らかである。元来第一審裁判に関与した判事は、その事件につき第二審の裁判官としての職務の執行から除斥されるものであるから(刑事訴訟法第二〇条第二号)、勾留更新決定と雖も第二審裁判所の裁判官としてはこれに関与することはできない筋合である。然るに若し第一審裁判に関与した判事が、第二審の裁判官として勾留更新決定を為したるときは、その決定は違法なるは勿論であるが、該決定はこれをなすと同時に裁判官としての行為は終了し、若しこれに不服ある場合には抗告又は異議等の方法により不服の申立をなし得るは格別、これありたることを原因として、当該裁判官を忌避することは許されないものと謂はなければならない。蓋し裁判官に対する忌避は、裁判官が特定の事件に職務上現実に関与しつつあるに際り、法定の事由ある場合にその裁判官の職務の執行を拒み之を排除しようとするにあつて、裁判官が既に職務の執行を終つた以上、忌避の対象となる職務は現実に存在しないからである。
本件について観るに、申立人に対する勾留更新決定を為した裁判官中浜辰男の職務は、該決定を為したことにより終了し、最早忌避の対象となるべき職務は存在しないのであるからこれに対しての忌避の申立は許容するに由なきものと謂はなければならない。