大判例

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東京高等裁判所 昭和28年(ネ)1428号 判決

控訴費用中被控訴人の請求の拡張によつて生じたものは被控訴人の負担とし、その余は控訴人の負担とする。

二、事  実

控訴代理人は、「原判決を取り消す。被控訴人の請求は原審以来請求の分、並びに当審拡張の分ともいずれも棄却する。訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は、控訴棄却の判決を求め、なお当審において請求を拡張し、「控訴人は被控訴人に対し原審認容の分の外さらに金九十九万千五百円並びにこれに対する昭和二十九年三月十八日から右完済迄年五分の割合による金額を支払え。訴訟費用は第一、二審共控訴人の負担とする。」との判決及び仮執行の宣言を求めた。

当事者双方の事実上の陳述並びに証拠の提出、認否、援用は、被控訴代理人において、「本件損害賠償の請求は民法第七百九条及び同法第七百十五条によるものである。失火ノ責任ニ関スル法律は本件には適用されないが、仮りに同法が適用されるものとしても本件の失火については控訴人に重大な過失があるものである。なお、控訴人主張の別訴の提起され現にけいぞく中であることは認める。」と述べ、控訴代理人は、「被控訴人が当審において拡張した請求については、被控訴人は控訴人を被告として昭和二十九年二月三日東京地方裁判所に同一の訴を提起し、同庁昭和二十九年(ワ)第九二五号事件として同裁判所に現にけいぞく中であるから、右拡張された請求は二重訴訟に該当するものである。」と述べた<立証省略>外、いずれも原判決の事実摘示と同一であるから、ここにこれを引用する。

三、理  由

被控訴人が当審において請求を拡張した部分につきその申立書を当裁判所に提出したのは昭和二十九年三月十五日であることは本件記録に徴し明らかであつて、右拡張部分は右拡張のときから訴提起の効力を生じたものとなすを相当とするところ、これよりさき被控訴人が原告となり控訴人を被告として同年二月三日東京地方裁判所に右拡張された請求と同一の請求の訴を提起し、右訴訟が同庁昭和二十九年(ワ)第九二五号事件として同裁判所にけいぞくすることは当事者間に争のないところであるから、被控訴人の右請求の拡張はたとえ当初請求にかかる損害賠償債権の残部を拡張して請求したものであるとしても右部分はまさしく二重訴訟に該当するものといわなければならない。従つて右請求の拡張は不適法であつて却下すべきものである。被控訴人の原審以来請求にかかる本訴請求が正当であつてこれを認容すべきものであることは、原審の判定と同様であるから、「当審証人大沢秀雄、登内七郎の各証言によつても原判決の認定を左右するに足りない。」と附加する外、原判決の理由の記載をここに引用する。よつて、本件控訴を棄却すべく、民事訴訟法第三百八十四条、第九十五条、第八十九条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判官 大江保直 岡咲恕一 猪俣幸一)

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