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東京高等裁判所 昭和28年(ネ)1785号 判決 1955年5月28日

控訴人 秩父鉄道株式会社 外一名

被控訴人 山梨県経済農業協同組合連合会

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実

控訴代理人は、「原判決を取り消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は、控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の陳述は、被控訴代理人において、「(一)被控訴人山梨県経済農業協同組合連合会は、第一審原告山梨県販売農業協同組合連合会を吸収合併し、昭和二十八年八月一日その旨の登記を了し、よつて後者の有した権利義務を承継した。

(二) 本件損害の発生につき、被害者に過失あることを否認する。

(三) 原判決中二枚目表七行目に「赤池等」とあるは「赤池」の誤につき訂正する。」と述べ、控訴代理人において、

「(一)被控訴人主張の合併並びに登記の事実は認める。(二)控訴人内田房吉がいわゆる甲片(甲第七号証の一並びに同第八号証の一)を発行したことと被控訴人主張の損害の発生との間には相当因果干係が存在しない。(イ)甲片二枚が何らかの事実を証明する文書であるとしても、その証明する内容は、文書の記載そのものから読み取り得る事実に限らるべきであつて、本件甲片の記載により証明さるべき事実の要点は高々<ツ>(丸通)が荷送人となつて、発駅秩父駅から着駅淀川駅にあて何らかの物品で、実重量一七〇(通常の慣例によれば百七十キログラムと解される)のものが十月二十六日小口扱貨物として積み込まれたという事実にすぎず、その物がこんにやく生藷であることは分明でない。被控訴人主張のように甲片一枚でこんにやく生藷一貨車分の貨車扱積込の事実を証明することはできないことである。(ロ)仮に本件甲片とその他の諸般の事情とで、被控訴人主張の事実が証明できるとしても、その他の諸般の事情を控訴人側、特に控訴人内田が知つていたと認めるべき特段の資料はない。(ハ)もし不分明な本件甲片が赤池真広の詐言と相まつて被控訴人をしてその主張のように誤信せしめたというならば、それは専ら赤池の詐言に基くものと見るべきで、ここに因果干係が完全に断絶している。

(二) 甲片一枚あたり五十万円というのは、赤池と被控訴人との売買代金相当額であり、本件甲片発行当時控訴人内田は右売買の具体的内容を知らなかつたし、また鉄道係員として受託貨物の売買代金やその売先を問いたゞす義務がないから売買の内容を知らなかつたことに過失もない。

(三) 甲片記載の貨物は運送中事故で滅失することもあるから、甲片は貨物の現存することの証明力を有しない。この甲片の性質は従来貨物運送事務に屡々関係してきた被控訴人の知り、又知り得べかりしことである。仮に被控訴人が甲片により貨物の現存することを信じたとすれば、被控訴人は通常の注意義務を怠つたもので、被控訴人に重大な過失がある。」と述べた外、すべて原判決事実適示記載のとおり(但し事実関係の主張中、原告とあるはすべて山梨県農業会と読み替えるを正当とすることは理由中に説明するとおりである。)であるから、ここにこれを引用する。

<立証省略>

理由

(一)  事実関係

控訴人秩父鉄道株式会社(以下控訴会社と略称する)が旅客及び貨物の輸送業を営むものであること、並びに控訴人内田が控訴会社に雇われ、秩父駅貨物係として勤務していたことは、当事者間に争のないところである。

成立に争のない甲第七、第八号証の各一、甲第一ないし第六号証、原審証人加島正美の証言を綜合すれば、控訴人内田は、控訴会社の秩父駅に貨物係として勤務していた間、昭和二十二年十月二十六日赤池真広の雇人の加島正美から「秩父にこんにやくの買付に来ているが、こんにやくもなかなか集らないので山梨の方に帰つても県農え顔向けができないから、形式だけでよいから二貨車分の甲片を出してくれ」という趣旨の請託を受け、貨物を実際に受け取つていないのに、同日秩父駅から淀川駅までの運送を委託せられた貨物を控訴会社が受け取つたことを証明する小口扱貨物通知書の甲片二通(甲第七、第八号証の各一、この点は更に後記(二)において説明する」にその実重量欄には「一七〇」と記載し、内一通には貨車番号と考えられる「ワ二三一一八」なる記号数字に更に「サ」の字を附して記載し他の一通には同様に「サ」「ワ二五六六」と記載し、あたかも二貨車分の貨物を受け取つたごとく解せられる甲片二通を作成して、これを加島正美に交付したことを認めることができる。

控訴人らは、控訴人内田が右甲片を発行した事情として、当時二貨車分の貨物の大半が秩父駅ホームに搬入されているのを現認し、その不足分である荷馬車二台分についても右加島の言明によれば、当日午前中には必着の見込があつたので、正式に発付するとすれば、貨車扱をもつてすべきものなのに全く私的な覚書に止める念慮から特に小口扱の貨物通知書の用紙を利用して非公式に甲片を発行したと主張しているけれども、前掲甲第一ないし第六号証、成立に争のない乙第七号証の一、二、三、同第八号証、同第九号証の一、二、同第十二号証の一ないし五、並びに前掲証人加島正美の証言を綜合すれば、控訴人内田は、本件甲片発行後である昭和二十二年十月三十一日から同年十二月二日までに、赤池真広ないし前記加島正美から五貨車分のこんにやく生藷を受け取つてこれが託送を依頼されたのにかかわらず、これを本件甲片の貨物に充当することをなさず、右生藷全部につき車扱貨物通知書甲片五通(乙第十二号証の一ないし五)を発行して同人らに交付しておることが認められるのであるから、控訴人内田に本件甲片発行当時右甲片に記載せられた貨物を後日受け取つて本件甲片を正当なものとする意思があつたとは到底認め難いのみならず、仮にかかる意思があつたとしても、少くとも本件甲片発行のときにおいて控訴会社が本件甲片記載の貨物の引渡を受けておらず、かつその後においても貨物の引渡がなかつたのであるから、本件甲片が終始いわゆる「空甲片」であつたことに変りなく、右意思の有無は本件甲片が空甲片であつたことより生ずる結果に対し何ら影響を及ぼすものでない。

次に、原審証人加島正美、原審並びに当審(第一、二回)証人佐々木高蔵の各証言、右各証言により真正に成立したと認める甲第七、第八号証の各二、前掲甲第七、第八号証の各一を綜合すれば、山梨県農業会は、赤池真広との間に同人が集荷したこんにやく生藷を同農業会指定の荷受人に直接送付させ、その出荷を鉄道駅発行の貨物通知書甲片を提出せしめることによつて確認した上で、その代金を同人に支払う旨の契約を結び、同人をして埼玉県内でこんにやく生藷を集荷せしめたこと、同農業会は、同人から前段認定の貨物通知書甲片(甲第七、第八号証の各一)を提出せしめ、同人の説明で、貨物はこんにやく生藷、実重量欄記載の「一七〇」とは貨物個数、一個(一俵)には十二貫ないし十四貫入、一貫あたり二百五十円ないし二百七十円と了解し、甲第七号証の一の甲片の分については昭和二十二年十月二十七日、甲第八号証の一の甲片の分については同年十一月一日、それぞれ右甲片表示の貨物代金の内金として金五十万円ずつ合計百万円を同人に支払つたこと、右甲片に相当する貨物は遂に仕向地に到達しなかつたことから、右甲片が貨物の受託なしに発行されたいわゆる空甲片であることが判明したが、赤池真広は、遂に同農業会に対し、右代金に相当するこんにやく生藷の引渡もなさず、また右金百万円の返還もなさないため、同農業会は、右金百万円に相当する損害を被つた事実を認めることができる。(被控訴人の主張に従えば、右取引の当事者、従つて右損害を被つたものは、第一審原告すなわち山梨県販売農業協同組合連合会であることになつているが、右は、同連合会は山梨県農業会を改組したものであつて、二者同一であると誤認したことに基くものであつて、もし二者別異なりせば、山梨県農業会であると主張したにちがいないことは、弁論の全趣旨によつて明らかであり、控訴人も同様誤認の下に答弁し、また抗弁していることが明瞭であるから、双方の事実上の主張中原告とあるはすべて山梨県農業会と読み替えて判断するを正当とすべくこれをもつて、当事者の主張せざる事項につき判断したと非難するはあたらないであろう。)

(二)  空甲片発行の違法性について。

控訴会社秩父駅貨物係であつた控訴人内田が昭和二十二年十月二十六日加島正美の請託を容れ、託送貨物の引渡を受けることなしに小口扱貨物通知書甲片(空甲片)二通を発行して同人に交付したことは、前段認定のとおりである。

しかして、原審証人川野満義、新海晴雄、当審証人関口平次郎、権田貞治、小林倉雄の各証言並びに弁論の全趣旨を綜合すると、控訴会社は、日本国有鉄道と連絡運輸をしている関係から国鉄の貨物運送規則に則つて貨物通知書を発行していること、従つて控訴会社においても、荷送人から貨物託送の申込を受け、これを承諾して貨物を受け取つた後に貨物通知書の甲片、乙片、丙片等を作成し、内甲片を荷送人に交付するもので、右は、車扱の場合でも、小口扱の場合でも同一であること、右甲片は、小口扱の場合には、荷送人が貨物を控訴会社係員に引き渡した後、直ちに重量、数量を検査して発行され、車扱の場合には、貨車に貨物を積み込んだ後に数量を検査して発行されるものであること、従つて貨物通知書甲片が発行されていれば、たとえそれが小口扱であつても、少くとも運送のため貨物が控訴会社に引き渡されたことを証明するに足るものと認めるに十分である。

従つて控訴人内田が託送貨物の引渡を受けることなしに、本件甲片二通を発行したことは、その動機事情のいかんを問わず貨物係としてなすことのできない行為であつて、違法な行為と目すべきものであることは、疑を容れないところである。

(三)  空甲片の発行と山梨県農業会の損害との因果関係について。

前段認定の事実関係によれば、山梨県農業会は、本件甲片が発行せられていなければ、赤池真広に対し合計百万円を渡さなかつたであらうことは明らかである。しかしながら、違法な行為をなした者に損害賠償の責任を負わしめるためには、違法な行為と損害の発生との間に単に前者がなかつたならば後者が起らなかつたであろうという単なる因果関係が存在するだけでは足らないのであつて、損害の発生が違法な行為の通常の結果と認められる場合か又は損害が特別な事情の下に違法な行為の結果として発生した場合には行為者において損害の発生を予見し、もしくは予見し得べかりし場合に限るべきものと解すべきものである。そこで、仔細に本件を見るに、前掲甲第七、第八号証の各一によれば、控訴人内田が発行した本件空甲片には、発駅欄に「秩父」着駅欄に「淀川」荷送人欄に「<ツ>」運賃欄に「一五」「四五〇〇」実重量欄に「一七〇」、年月日として「十月二十六日」と記載してある外「サ」「ワ二五六六」、「サ」「ワ二三一一八」と貨車番号の如き記載あるに過ぎず、かつ本件甲片は貨物通知書であつて、貨物引換証のような物権的有価証券でないから、空甲片発行の通常の結果として本件の場合のような損害が発生するものと認めることはできない。

それ故、本件においては、本件の場合のような損害が発生することを行為者である控訴人内田において予見し、又は予見し得べかりし場合にのみ、山梨県農業会は控訴人内田及びその使用者である控訴会社に対し損害賠償の責を問うことができるものというべきである。そこで、控訴人内田が本件のような損害の発生を予見していたかどうかを按ずるに、前掲甲第一号証によれば、控訴人内田は本件甲片が「使いようではとんだ結果になる」と思つていたことを認めることができるけれども、これだけで同人に本件損害の発生についての予見があつたものとは認め難いのみならず、この外には控訴人内田が本件損害の発生につき予見があつたと認められるような証拠は何もない。

しかしながら、(イ)貨物を運送機関に引き渡さないのに、これを引き渡したかのようにして運送機関から発行せしめる貨物受取証が金員騙取の手段に供せられることのあることは古くから一般に知られているところであり、(右は公知の事実と認むべきものである)、(ロ)原審証人新海晴雄の証言によれば、同人は日本通運株式会社に長く勤務する者であるが、荷送人が荷受人のところに荷物が到着しない先に甲片だけを持つて行つて荷物の代金を受け取つたことを実見したことがあつたことが認められること、(ハ)原審証人斎藤進の証言によつて認められる荷物が荷受人に到着する前に甲片によつてその荷物の代金を支払うことが取引上世間でしばしば行われていること、(ニ)原審証人佐々木高蔵の証言、同証言によつて真正に成立したと認める甲第九号証、原審証人古屋勝、当審証人飯室今朝雄の証言を綜合して認められる当時既に日本全国にわたり農業団体の間において鉄道甲片により売買代金を支払う慣行があつたことが認められること、(ホ)前段(一)において認定したとおり、控訴人内田は、本件空甲片発行当時加島正美らがこんにやく生藷の収売に従事し居り同人らは本件空甲片が発行されれば、これを「県農」(山梨県農業会)に対しこんにやく生藷の発送を証明するために使うであろうことを知り、かつ小口扱貨物通知書には通常記入しない貨車番号まで書き入れて、甲片一通をこんにやく生藷一貨車分の受託を証明するように作成したことが認められること、――以上(イ)ないし(ホ)の事実を綜合すれば、控訴人内田は、少くとも本件空甲片発付の際相当の注意を払うならば、山梨県農業会があるいは右空甲片により二貨車量のこんにやく生藷が運送のため控訴会社に引き渡されたものと信じてその代金を支払うかも知れないことを予見し得べかりしものであつたと認めるを相当とすべく、予見し得なかつたことに対する同控訴人の過失は同控訴人自らその責を負うべきである。そして損害の発生にして予見しまたは予見し得べかりしものである以上、その額については、特に異常なものでない限り、行為者において特に認識するを要しないものというべく、本件において金百万円の損害の額が特に異常なものであると望むべき証拠はない。従つて控訴人内田が山梨県農業会と赤池真広との間の前記契約内容を知らず、こんにやく生藷一貨車分の価格が金五十万円に上ることを知つていなかつたとしても、右事実は、本件空甲片の発行と損害の発生との間に相当因果関係の存在を認めるにつき何ら妨げをなすものでない。

これを要するに、控訴人内田は本件の担害の発生を予見し得べかりしものであつたと認定するを相当とする。

控訴人らは、赤池真広の詐欺行為によつて、本件空甲片の発行と本件損害の発生との間の因果関係に中断があると主張しているけれども、仮に赤池真広に詐欺行為があつたとしても、本件空甲片の発行がなかつたならば、同人の詐欺行為のみによつては、山梨県農業会の権利侵害並びに損害は決して生じ得なかつたのであるから、場合により不法行為の競合を生ずることあるは格別、これをもつて因果関係の中断を来したものとなすことはできず、控訴人らの右主張は理由がない。

従つて控訴人内田は、山梨県農業会に対し本件空甲片の発付に基因して同農業会の被つた前記金百万円の損害を賠償すべき義務あるものというべきである。

(四)  山梨県農業会の過失について。

控訴人らは、山梨県農業会が、(イ)本件甲片が小口扱であつたことに疑をはさまず、(ロ)本件甲片を貨物引換証と同様に扱い、(ハ)甲片は貨物の現存することの証明力を有しないのに、甲片により貨物の現存を信じ(ニ)昭和二十二年十一月初旬本件甲片は現実に貨物の受託がないのに発行されたことを知つた後に更に金二百万円を支払い、本件甲片発行による損害を防止しなかつたことに過失があると主張しているけれども、(イ)原審証人佐々木高蔵の証言によれば、控訴会社秩父駅長が「その頃(本件当時)は貨車が払底していたから小口の貨車を貸切に使つたこともある。」と言明したことが認められるから「小口扱」なる記載を被控訴人が看過したことが山梨県農業会が取引上必要な注意を怠つたものといい得ないし、(ロ)(ハ)については、本件甲片が少くとも貨物を鉄道に運送を委託して引き渡したことを証明するものであることは、前段認定のとおりであるから、同農業会が本件甲片により貨物が控訴会社に運送委託のため引き渡されたことを信じて、これが代金を支払つたことは、同農業会が取引上の必要な注意を怠つた結果であるといい得ない。次に(ニ)の点については、前掲乙第十二号証の一ないし五、成立に争のない乙第六号証の一によれば、同農業会が控訴人主張のように二百万円の支払をしたことは認められるけれども、同農業会がこれが支払に先立ち本件甲片が空甲片であつたことを知つていたと認むべき証拠がないから同農業会に本件損害の発生防止につき過失があるとするのは理由がない。従つて本件損害賠償額を算定するにあたつて、同農業会の過失を斟酌すべきであるとの控訴人の主張は採用することができない。

(五)  控訴会社の損害賠償義務について。

控訴会社が控訴人内田を秩父駅の貨物係として使用していたことはさきに認定したとおりであるから、本件甲片の発行が控訴会社の事業の執行につきなされたものであることは疑を容れる余地がない。控訴会社は、甲片の発付は控訴人内田の独断による私的行為で、なんら職務に関するものでないと主張しているけれども、同人は控訴会社の秩父駅の貨物係であり貨物通知書甲片の発行は同人の職務に属し、かつ正規の用紙を使用して本件甲片を作成したことは、前掲甲第一、第二号証第七、第八号証の各一によつて明らかであるから、これをもつて控訴会社の事業の執行につきなされたものと解するに何の妨げもないのである。

控訴会社は、更に控訴人の選任又はその事業の執行についての監督につき相当の注意をなしたと主張しているけれども、本件一切の証拠によるも、控訴会社が控訴人内田の貨物係としての職務の執行につき有効適切な監督をしていたと認むべき的確なる証拠はないから、控訴会社は控訴人内田が山梨県農業会に加えた損害の賠償をなすべき責あることは、もちろんである。

(六)  被控訴人の右損害賠償債権の承継取得について。

山梨県農業会がその後昭和二十二年十一月十九日法律第百三十三号農業協同組合法の制定に伴う農業団体の整理等に関する法律に基き解散し、新たに山梨県販売農業協同組合連合会が設立せられ、同農業会の有した資産の譲渡を受けたことは、当裁判所に顕著であるので、同連合会は、反証のない限り本件損害賠償債権をも譲り受けたとなすを相当とすべく、被控訴人山梨県経済農業協同組合連合会が右山梨県販売農業協同組合連合会を吸収合併し、昭和二十八年八月一日その旨の登記を了し、よつて後者の有した権利義務を承継したことは当事者間に争ないところであるから、被控訴人は、右合併により本件損害賠償債権をも承継取得したものとなすべきである。

(七)  結論

よつて控訴会社並びに控訴人内田は、各自被控訴人に対し、本件損害金百万円並びにこれに対する本件訴状の控訴人らに送達せられた日の翌日である昭和二十六年四月二十八日から支払ずみまでの民法所定の年五分の割合の遅延損害金を附して支払うべき義務あること明らかであつて、これを認容した原判決は正当である。

それ故本件控訴は理由がないものとして棄却し、控訴費用の負担につき民事訴訟法第八十九条第九十三条第九十五条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 大江保直 草間英一 猪俣幸一)

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