大判例

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東京高等裁判所 昭和28年(ネ)474号 判決

昭和二十二年五月七日午前十時東京地方裁判所(民事第七部)において、沼田安蔵(原告)と工藤電気株式会社(被告)間の同裁判所昭和二十二年(ワ)第三三八号建物収去土地明渡事件につき、控訴人主張のとおりの和解が成立し(これを第一和解という)、工藤電気株式会社は沼田安蔵に対し東京都中央区槇町一丁目三番地二号の一宅地三百七十三坪五合八勺の北側境界線から南方へ十間迄の部分八十三坪一合二勺の内十六坪の一区劃に所在する木造亜鉛葺平家建事務所一棟建坪九坪(家屋番号槇町二番の一)を昭和二十四年四月末日迄に収去して、その敷地十六坪を明け渡す義務を負つたことは、当時者間に争のないところである。

しかして控訴人が第一和解成立の後である昭和二十四年十一月中、工藤電気株式会社から右事務所の内六坪を賃借し、その後引きつづきこれを占有していることは原審における原告(控訴人)本人尋問の結果により明らかである。(右占有の事実は被控訴人においても認めるところである。)よつて控訴人は右事務所につき、和解成立後にその占有を承継したものであり、民事訴訟法第二百一条第一項にいう承継人に該当し、右和解の効力を受ける筋合である。

しかるに、控訴人は右第一和解による工藤電気株式会社の義務は和解成立後に消滅したと主張するので、以下控訴人主張の異議の事由について判断する。

工藤電気株式会社が昭和二十六年四月二日右事務所の建物を小野田満春に売り渡し、同月十八日その旨の所有権移転登記を経由したことは成立に争のない甲第一号証によつて明らかである。控訴人は右建物の売渡により工藤電気株式会社の建物収去、敷地明渡の義務が履行不能により消滅したと主張しているけれども、右建物が滅失しないかぎり、工藤電気株式会社の建物収去の義務が消滅するわけがない。和解成立後に建物所有権が移転しても、前主たる工藤電気株式会社の建物収去義務には影響なく、ただ新所有者である小野田満春が工藤電気株式会社の承継人として、民事訴訟法第二百三条、第二百一条第一項により、和解の効力を及ぼされるだけである。従つて、和解成立後の右建物所有権の移転は、和解調書の執行力を排除する事由たり得ざるものであり、この点に関する控訴人の主張は理由がない。

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