東京高等裁判所 昭和28年(ラ)124号 決定
ゆえに、すでに工場に属する土地又は建物について抵当権実行による競売手続開始決定のあつた以上、右競売手続は土地建物について法律上当然にこれに附加備付の物件についても及ぶのであつて、これについて重ねて工場抵当法第二条による抵当権実行のための競売申立があり、この申立の目的物件中には右土地建物の備付物件等があつたとしてもこれは要するに同一物件について重ねて競売申立があつたものに過ぎないからこの物件についてさらに競売開始決定をすべきものでないことは当然である。裁判所はこの申立をさきの競売記録に添付してその旨を利害関係人に通知し、工場たる土地建物とともにこれら備付物等について競売手続を進行すべきものである。もつとも記録中の本件建物登記簿謄本によれば債権者不二越鋼材工業株式会社の前記抵当権設定登記には工場抵当法第三条第一項による目録の提出がないことは明らかであるが、右抵当権設定行為に特に同法第二条第一項但書にいわゆる別段の定めのあつたことはこれを認め得ない(記録中の抵当権設定契約参照)ところであるから、右目録の有無は前記結論を左右すべきものではない、ただ右備付物件等の価額部分については債権者不二越鋼材工業株式会社としては第三者殊に本件において他の債権者たる株式会社日本勧業銀行に対し優先弁済の効力をもつて対抗し得ないというに過ぎないのである。(あるいはかように解すると不動産競売開始決定には土地、建物のみを表示し、右備付物件等については一も表示するところがないから、債務者、物件所有者その他の利害関係人に予測しない不利益を被むらせることがありはしないかとの疑問もあるが、この申立があつたことについてはそれぞれ利害関係人に通知されるのであるからそのおそれは少しもないと考えられる。
よつて原裁判所が前記認定のとおり、昭和二六年(ケ)第二三号事件による建物競売手続進行中、昭和二七年(ケ)第四一号をもつて工場抵当法第二条による抵当権実行のためこの建物とともにこれに備付けられた機械器具類等についても競売申立がなされたので、右申立を右第二三号事件記録に添付し、その旨利害関係人に通知し、右物件を建物とともに一括して競売に付する手続をとつたことはまことに相当であつて、これを不当として攻撃する本件異議申立は理由がない。