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東京高等裁判所 昭和28年(ラ)187号 決定

第一、本件抗告の趣旨並びに抗告理由は、別紙記載のとおりである。

第二、決定理由

本件仮処分申請前に、債権者被抗告人外一名、債務者抗告人間の東京地方裁判所昭和二十八年(ヨ)第二一八号行為禁止仮処分申請事件につき「(1)債務者(抗告人)は昭和二十九年四月二十五日まで中里介山著作小説大菩薩峠に関し債権者等(被抗告人外一名)がなす映画製作、製作映画の上映を妨害するが如き一切の行為をしてはならない。(2)債務者は昭和二十九年四月二十五日までは同著作の映画を自ら上映しまたは第三者をして上映せしめてはならない。」との旨の仮処分決定がなされ、現に執行中であるところ、抗告人はその後本件において右仮処分債権者たる被抗告人を相手方として「債務者(被抗告人)は、一、故中里介山著作の長編小説、大菩薩峠を映画化し、二、その映画の製作並びに上映することを自らなし、または第三者をしてなさしめてはならない。」旨の仮処分決定を求めていることは、本件記録に徴して明らかである。してみると本件の右第二次の仮処分申請の趣旨は、現に執行中の第一次の仮処分決定とその内容において相牴触することは一見明瞭であつて、かくの如く同一当事者間において既になされている仮処分決定に基く執行処分を除却せんがためには異議の申立その他民事訴訟法の認める他の方法によつて該仮処分の裁判ないし執行処分の取消をなし得べく、これら救済方法によらないで、前の仮処分と相牴觸する第二次の仮処分を申請し以てさきの仮処分決定の廃止、変更ないしはこれらに基く執行を除却することは許されないと解すべきである。蓋し、若し然らずとせんか当事者双方は本案の訴を新たなる仮処分を利用し交々他の仮処分をして実効なきに至らしめ窮るところなきに至るからである。

尤も抗告人主張の如く、第一次の仮処分決定は抗告人(債務者)に対し妨害行為(事実行為)を禁じたに止り、抗告人が裁判所に権利保護を求めることを禁止したものでないことは勿論であるけれども、このことは前段説示の如く、本件仮処分の申請趣旨が同一当事者間の前記第一次の仮処分の内容と相牴触するものであるとの見解を妨げるものでないことは、多言を要しないところである。

よつて同一理由によつて抗告人の本件仮処分申請を却下した原決定は相当であるから、本件抗告を棄却すべきものとし、抗告費用の負担につき民事訴訟法第八十九条、第九十五条を適用して主文のとおり決定する。

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