東京高等裁判所 昭和28年(ラ)350号 決定
抗告理由の要旨は、本件強制競売物件の所有者に競売期日の通知をしないで競売を施行し競落を許可した原決定は、違法であるというのであつて、抗告人提出の建物登記簿謄本によれば、本件競売建物については昭和二十八年三月十八日東京法務局武蔵野出張所受付第二〇三七号を以て件外保坂はなのため同年同月同日売買予約に因る所有権移転請求権保全の仮登記がなされ、次いで同年五月十三日同出張所受附第三七九〇号を以てこれが本登記を経由したことは明らかであるが、右建物についてはさきに株式会社八宝社から競売の申立があり、昭和二十八年一月二十二日原裁判所の競売開始決定に基き同年一月二十八日その旨の登記記入がなされているのであるから、これによつて差押の効力を生じ、その後前記の如く本件不動産の所有者となつた右保坂はなは、これを以て差押債権者たる本件競売申立人株式会社八宝社に対抗することができず、従つて本件競売期日の通知も、不動産所有者としての同人に対してなすを要せず、従前の所有者たる抗告人に対する通知で足ると解すべきである。のみならず他の利害関係人の権利に関する理由に基いてなすかかる抗告理由は、民事訴訟法第六百八十一条第二項第六百七十二条第六百七十三条に照らし許されないと言わねばならない。
元来強制競売の場合にあつては競売法第二十七条第二項に定める如く競売期日を利害関係人に通知するを要する旨の明文の規定を欠き,ただ民事訴訟法第六百五十八条第五号、第十号の公告事項とされているに過ぎないのであるが、仮りに任意競売におけると同様これが通知を要するものと解しても、前説示の理由により前記保坂はなに対し本件競売期日の通知のなかつたことは、何等競売手続を違法ならしめるものでなく、かかる事由は民事訴訟法第六百八十一条第二項第六百七十二条所定の抗告適法の理由とならないのである。