大判例

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東京高等裁判所 昭和29年(う)1047号 判決

被告人 五十嵐治 外

〔抄 録〕

検察官控訴趣意第二点について。

仍て原判決を仔細に検討するに、原判決はその理由中判示第一の(4)の事実につき「被告人両名は共謀の上同年九月二八日同都世田ケ谷区王川奥沢町一丁目四五一番地神代利往方に於て同人所有の煽風器一台外雑品約二〇点位(時価約一万千九百円相当を窃取した」旨認定しているところ、右事実に対する法令の適用においては「被告人五十嵐の判示所為中(中略)窃盗の点は刑法第二三五条詐欺の点は云々」と判示し又右同一事実につき「被告人藤下の判示所為中(中略)窃盗の点は同法第二三五条に各該当する」旨判示しているのみであつて孰れも刑法第六〇条を適用していないこと、而して又原判決はその理由中判示第六の事実につき「被告人五十嵐治は田中勇と共謀の上強盗の目的を以て同年一〇月一〇日午前三時頃肉切庖丁、登山用ナイフ麻繩等を携え同区東玉川町一〇八番地船越弘方表門より同人方の庭内に侵入し以て強盗の予備をなした」旨認定し乍らこれに対する法令の適用に当つて「被告人五十嵐の判示所為中強盗予備の点は刑法第二三七条第六〇条に、(中略)住居侵入の点は同法第一三〇条に各該当する」旨判示し右強盗予備の点についてのみ第六〇条を適用し、住居侵入の点についてはこれを適用していないこと洵に所論のとおりである。果して然らば既に此の点において原判決は法令の適用を誤りたる違法あるのみならず、後者については理由齟齬の違法あるものであつて到底破棄を免れない。尤も共犯に関する総則的規定はこれに依拠したことが判示上明瞭な場合には必ずしもその適用を明示しないからと云つて判決に影響ある違法を以つて目すべきではないけれども、原判決はその判文上明かな如く、前掲以外の他の共謀に基く数個の判示事実については総て刑法第六〇条を適用し乍ら、前掲事実についてのみ殊更にこれを適用しなかつたものであるから、該違法は判決に影響あるものと認めざるを得ない。

更に判決は、被告人藤下に対し判示窃盗及び強盗の事実を認定した上、同人を懲役三年に処しているのであるが、法令の適用においては「被告人藤下の判示所為中強盗の点は刑法第二三六条第六〇条に、同未遂の点は第二三六条第二四三条第六〇条、窃盗の点は第二三五条に各該当するところ、以上は同法第四五条前段の併合罪の関係にあるので同法第四七条第一〇条を適用し、最も重き判示第五の強盗の罪の刑につき同法第一四条の制限に従い併合加重を為した刑期範囲において各主文掲記の刑を量定処断し」と判示しており他に何等法令を適用していないこと洵に所論のとおりである。然し乍ら刑法第二三六条所定の刑期は五年以上の有期懲役刑であつて、原判決に所謂懲役三年の刑は前記法条の適用のみによつては生じるに由なきものと謂わなければならない。果して然らば原判決は此の点においても法令の適用に誤があり、該違法は判決に影響を及ぼすこと明かであつて到底破棄を免れない。

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