大判例

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東京高等裁判所 昭和29年(う)1188号 判決

被告人 佐藤薫

〔抄 録〕

弁護人の論旨第一点について。

所論に鑑み本件各起訴状記載の各公訴事実と原判決摘示の各認定事実とを比較検討するに、被告人に対する昭和二十八年十月七日附本件起訴状第三の公訴事実として「同月十三日頃(昭和二十八年四月十三日頃の意)前記被告人方に於て山土井秀行に対し塩酸ヂアセチル、モルヒネ(ヘロイン)一包約〇・〇五瓦を代金五百円で譲渡し」と記載せられある訴因に対しては、原審で判決した事跡なく、一方原判決は罪となるべき事実摘示第一の(四)に於て「同月十三日頃右同所(被告人方の意)に於て右同人に対しヂアセチル、モルヒネの塩類であるヘロイン(昭和二十八年地領第四六〇号の三)一包約〇・〇五グラムを代金五百円で譲渡し」と認定しており而して右判文中………右同所に於て右同人に対し………とある「右同人」とは原判決第一の(三)を受けておるのであるから判文上同(三)判示の買受人「山土井晴夫」を意味するものと解すべきところ、本件起訴状には右原判決の認定事実に恰当する公訴事実の記載あるを発見することができない。ただこの点について、右原判決第一の(四)の…………右同人に対し…………とある「右同人」とは前記昭和二十八年十月七日附起訴状記載の公訴事実第三の買受人「山土井秀行」の誤記であるとの意見も出て来るかも知れないが、原判決を仔細に検討するに、原判決の他の認定事実中その他挙示の証拠標目中「山土井秀行」なる記載あることなく、従つて原判決の前記「右同人」とは前記起訴状記載の「山土井秀行」の意味で原判決の誤記であるとして看過することは到底できない筋合である。然り而して「山土井晴夫」と「山土井秀行」が別人であることは訴訟記録に徴し明らかなところであり、麻薬買受人を「山土井晴夫」とするか「山土井秀行」とするかは本件の場合自然訴因に違いが生じ、同一ということはできないから、原判決は所論のとおり審判の請求を受けた事件について判決をせず、反対に審判の請求を受けない事件について判決をした違法を犯したものといわなければならない。従つて論旨は理由があり原判決は他の論旨に対する判断を為すまでもなく刑事訴訴法第三百七十八条第三号第三百九十七条に則り破棄を免れない。

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