大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和29年(う)1464号 判決

被告人 高橋金造

〔抄 録〕

弁護人の控訴趣意第一点について。

記録を調査すると、被告人に対する昭和二十九年二月二十五日附起訴状記載の公訴事実には、被告人は武藤某と共謀して昭和二十九年二月二十二日午前九時二十分頃東京都港区芝三田二丁目一番地慶応義塾大学新館地下室において関屋元雄外四名所有のレザー製ボストンバツク一個等を窃取したものであると示されているが、原審第二回公判期日において原審検察官は前記起訴状中「被告人は武藤某と共謀して」を「被告人は」と訂正する旨を述べ、原審裁判官はこれを許可したにもかかわらず、原判決は被告人の罪となるべき事実としてその一、に被告人が武藤某と共謀して昭和二十九年二月二十三日午前九時二十分頃東京都港区芝三田二丁目一番地慶応義塾大学新館地下室において関屋元雄外四名所有のレザー製ボストンバツク一個等を窃取した事実を認定していることが認められること所論の通りである。しこうして、原判決が右の窃盗の事実を認定するについては、訴因変更の手続を経た形迹は記録上存しないことも亦所論の通りであるが、被告人が単独で前記日時場所において前記物品を窃取した事実と被告人が武藤某と共謀して前記日時場所において前記物品を窃取した事実との両者はその基本的事実関係を同じくし、事実の同一性を保つているものと認められ、且つ記録によつて窺われる原審の審理の経過に徴しても、被告人が武藤某と共謀して前記窃盗をしたものと認定されることが、被告人の防禦に実質的な不利益を及ぼす虞のあるものとは認められないから、判決の事実認定において訴因に含まれた事実の一部をこの程度において変更するには訴因変更手続を経ることを要しないものと解するを相当とするのである。しからば原判決が訴因変更の手続を経ることなくして被告人の共謀による窃盗の事実を認定していても、所論のように訴訟手続法令に違背したものということはできないから、論旨は理由がない。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!