大判例

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東京高等裁判所 昭和29年(う)1524号 判決

被告人 椎野富士雄

〔抄 録〕

本件記録を精査し、かつ当裁判所で取調べた証拠調の結果に徴すると、本件犯行の動機は関税逋脱の目的をもつて、税関職員の買収を企図したものであり、その罪質は営利のために公務員の廉潔を侵害し、綱紀の紊乱を誘発したもので、同情すべき余地はないが、被告人は本件犯行後改悛の情が顕著であるばかりでなく、その職務上の地位は外国人経営会社の一使用人に過ぎず、関税の逋脱によつて直接には何等の利益を享受するものでもなく、またその犯行の動機も仔細に検討すれば、雇われ先の会社首脳部の指揮命令に従つたものであることを窺うに難くない。而してこれに被告人の年齢や、経歴、家庭の状況その他諸般の事情を斟酌すると、もし被告人を懲役刑に処するとすれば、相当期間、右刑の執行を猶予するのが相当であると認められる。ことに収賄者たる原審相被告人石井一夫が懲役六月、三年間執行猶予の判決を受けているのに比較しても、贈賄者たる本件被告人を特に懲役の実刑に処さなければならないような特別の事情の存するとは認め難いにかかわらず、原判決が被告人を懲役六月に処しながら、その執行猶予の言渡をしなかつたのは量刑重きに過ぎるものというべく、破棄を免れない。論旨はいずれも理由がある。

註 本判決の量刑は懲役六月三年間執行猶予。

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