大判例

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東京高等裁判所 昭和29年(う)1709号 判決

被告人 李曾孝

〔抄 録〕

論旨二について。

原判決がその主文に掲記する物件を犯人たる被告人以外の者の所有に属しないとしてこれを没収していることは所論のとおりである。

しかし、右物件中昭和二九年領第二五号の一一の塩酸ヂアセチルモルヒネ一包を除きその余の物を被告人が各所持していたことは原判決挙示の各証拠によつて明瞭に認めうるところであり、なお右各物件は被告人が所持するとともに一応その所有にも属していたものと推認するに難くないのである。のみならず、塩酸ヂアセチルモルヒネは何人といえども所有は勿論所持することも許されないものであり、又覚せい剤も法定の事由のない以上何人もこれが所有所持することを許されないものであるところ、本件被告人がこれの所有所持することを許されていないものであることは原判決挙示の証拠によつて十分これを認めうるところであり、且つ本件覚せい剤は法定の事由によつて所有所持することを許されている者の所有に属しないものであることも亦本件記録によつて明瞭であるから、このように何人の所有所持をも許されないものはたとえそれが犯人の所有に属していなくても刑法第一九条第一項に該当するなら、これに従つて没収しうるものと解されるので何れにしても原判決が右物件を没収したのは正当であつて、法令適用の誤は認められない。

次に右一一の一包については、被告人の原審第四回公判供述及び山田時造の司法警察員に対する第一回供述調書謄本の記才によれば、原判示五の被告人から山田時造に譲渡された塩酸ヂアセチルモルヒネ一包の一部であることを認めうるのである。

従つて右一包は本件当時被告人の所持所有していたものではないのであるから、原判決がこれを被告人の本件所持罪の組成物件として没収したのは正に事実を誤認し、法令の適用を誤つたものである。

しかし右は前示のように被告人の原判示五の譲渡罪の供与物件であり、且つ前説示のとおり何人の所有所持をも許されないものであるから、たとえ被告人の所有に属しないものであつてもこれを没収したのは結局においては正当であつて、右の誤は何等判決に影響を及ぼさないものである。要するに論旨は採用はできない。

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