東京高等裁判所 昭和29年(う)2049号 判決
所論は、要するに、原判決において、相田銀蔵の検察官に対する(一)昭和二八年六月一五日附第二回供述調書、(二)司法警察員に対する昭和二八年四月三〇日附、同年五月八日附および同年六月八日附各供述調書謄本を罪となるべき事実認定の証拠として引用したのは訴訟手続上違法にして、同違法は判決に影響をおよぼすこと明らかなる旨を主張するものである。
そこで、まず相田銀蔵の司法警察員に対する右三通の供述調書謄本につき按ずるに、これらの書類は、昭和二九年五月一五日の原審第三回公判期日に検察官から書証として取調請求があつたとき弁護人において不同意を表明したところ、原審は、これらの書類を以て刑事訴訟法第三二一条第一項第二号の規定に該当するものとして証拠調をなしたのであるが、原審においては、同公判期日以前たる同年四月一七日公判準備として右相田銀蔵に対する証人尋問をなしその供述を録取した書面たる同証人尋問調書が書証として右第三回公判期日に提出して取調をなされていること孰れも記録上明らかである。然るに、右相田銀蔵の司法警察員に対する供述調書類は、刑訴法第三二一条第一項第二号にいわゆる検察官の面前における供述を録取した書面にあらざるは勿論同条項第一号の裁判官の面前における供述を録取した書面でもなく、残るは唯同条項第三号にいわゆる「前二号に掲げる書面以外の書面」に該当するや否やの問題であるが、右相田は前述の如く既に公判準備において本件証人として供述している以上同一人の右司法警察員に対する供述録取書類が右条項第三号に該当するものとして当然の証拠能力を有しないことは明白である。而して同書類を証拠とすることについては弁護人から不同意の表明あり、その他の点においても特に右証拠能力の欠缺を除却すべき途は見出すことができない。然らば、これらの供述録取書類謄本を罪となすべき事実認定の証拠として引用した点において、所論の如く、原判決には訴訟手続上違法のものありといわなければならない。
故に、進んで、右違法が判決に影響すべき性質のものなりや否やを審究するに、元来右司法警察員に対する供述調書(謄本)三通は相田銀蔵に対する詐欺被疑事件関係の供述録取書(謄本)であり、その記載内容は、被告人に関する本件賍物故買罪からみれば、いわゆる本犯の成立経過を知る資料たる部分が主であるが、同時に、之に関連して、右騙取にかかる賍物たる煙草等の諸物件を被告人が知情の上故買した日時、場所、方法、品目、数量および代価等の具体的態様を知るについても、右書類の記載は、やはり原判決引用にかかる相田銀蔵の検察官に対する昭和二八年六月一五日附第二回供述調書(詐欺被疑事件に関するもの)や被告人の検察官に対する第一、二回供述調書(賍物故買被疑事件に関するもの)の各記載の実質的内容を形成している部分も少くないことは、右各書類の記載自体に徴して明瞭である。而して原判示各賍物故買事実は、以上の各書類を除外した残余の原判決引用証拠のみによつては到底之を認めるに十分ではないから、前記司法警察員に対する供述調書謄本三通引用による訴訟手続上の違法は、判決に影響ある性質のものと認めるを相当とする。