東京高等裁判所 昭和29年(う)2652号 判決
被告人 児玉静一
〔抄 録〕
弁護人控訴趣意第一点について。
按ずるに、公職選挙法第一四八条第二項所定の新聞紙又は雑誌が選挙に関し報道及び評論を掲載したものでなければならないことは法文上洵に明らかでありまさに所論のとおりである。
而して所論によれば、原判示の「自由新聞」は選挙に関し報道及び評論を掲載したものではないから公職選挙法第一四八条第二項の頒布の制限を受けるものではない旨主張するのであるが苟くも原判示自由新聞に原判示の如く昭和二八年四月上旬頃印旛郡手賀沼干拓に関する特定国営土地改良事業促進法案を前期国会に於て上提せんとした時の状況を叙述して判示選挙に於て印旛郡周辺部落の同一選挙地盤の上に対立して立候補した寺島隆太郎と竹尾弐とを批判し右寺島隆太郎に投票を得させるについて有利な記事を掲載してある以上(此のことは原判決挙示の証拠により優に認定することができる)、右自由新聞が公職選挙法第一四八条第二項所定の新聞紙に該当することは洵に明らかであつて、かかる新聞紙を同条項の規定に違反して頒布した以上同法第二四三条第六号の犯罪を構成すべきは極めて当然であり、原判決が原判示事実に対し同法第一四八条第二項第二四三条第六号を適用処断したのは洵に相当であつていささかも違法の廉あるを見ない。
所論は徒らに独自の見解を主張するものであつて到底採用し難く論旨はその理由がない。
註 原審判決の罪となるべき事実
被告人児玉静一は、成田市成田に発行所を有する自由新聞(月三回発行)の編集発行人でその販売業を兼ねて居るもの、被告人大和田泰治は昭和二十八年四月十九日施行された衆議院議員総選挙に際し、千葉県第二区から立候補して当選した寺島隆太郎の選挙運動に従事して居つたものであるところ、被告人等は共謀の上右候補者寺島隆太郎に当選を得しめる目的を以つて同年四月上旬頃印旛郡手賀沼干拓に関する特定国営土地改良事業促進法案を前期国会に於て上提せんとした時の状況を敍述して、右選挙に於て印旛郡周辺部落の同一選挙地盤の上に対立して立候補した右寺島隆太郎と竹尾弍とを批判し右寺島隆太郎に投票を得させるに付いて有利な記事の掲載してある自由新聞三月二十五日附約千五百部、四月五日附約三千二百六十部を夫々通常の頒布先でない印旛郡下の青柳秀徳外多数の選挙人に被告人児玉静一経営の自由新聞社名下で通常の方法によらないで無償で第三種郵便物として郵便到達せしめ以つて之れを頒布したものである。