大判例

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東京高等裁判所 昭和29年(う)2982号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判旨〕連続犯に関する刑法第五五条の規定が削除せられた後においても、犯罪の日時が接着しその場所を同じうし被害法益が単一であり、かつ犯人の継続した犯意の下になされた数罪を包括して観察しこれを一罪と認めるのを相当とする場合のあることは洵に所論のとおりであるが、これら数罪を包括して一罪と観察すべきや否やは、犯人の行為、その日時場所の関係、被害法益の単一なりや否や、犯意の如何は勿論その他具体的情状等客観、主観両方面より考察し、各具体的事件について規範的に評価してこれを決定しなければならない。しかし本件についてみるに、原判決挙示の証拠により認められる原判示事実は、被告人甲及び乙の両名は共謀の上二八・四、中旬から二九・二上旬までの間合計十九回に亘りA所米軍東京兵器廠第四地区工場内において在日米軍所有の真鍮棒屑を一回約十貫匁乃至約十五貫匁を窃取したというのであるところ、その犯行の場所被害法益はいずれもこれを同じうするものであり、日時も凡そ一ケ月二回宛にて比較的接着していることは明らかであるが、被告人等が同一犯意のもとにすなわち継続して窃取する意図の下に本件犯行をなしたと認めるには十分な証拠はなく、記録によつて窺い得る本件犯行の具体的情況によれば却つてその然らざることを推認し得るから、本件犯行は各独立した別個の窃盗行為なりと認めるのを相当とすべく、従つてこれを包括して一罪に認めるには適しない。従つて原判決がこれを併合罪を認めたことは相当であつて、原判決には何ら所論の如き法令の適用の誤は存しない。

〔説明〕この問題については既にここでも数回紹介しているので繰り返さないこととするが、包括一罪を認める客観的竝びに主観的条件については判旨の説示しているとおりである。多くの場合主として主観的な意思の単一又は同一乃至は継続が認められないとして包括的一罪の主張を拒否している事例が多い。(本件も亦同様である。)従つて実際問題としては例えば、ある者から預つた金員を引き継ぎ少し宛自己の用途に費消して横領するような限られた場合にのみ包括一罪の成立をみることであろう。

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