大判例

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東京高等裁判所 昭和29年(う)3006号 判決

被告人 北村数男 外二名

〔抄 録〕

弁護人Kの控訴の趣意第一点について。

論旨は、原判決は、被告人北村が北村数男であつて一夫でないことは記録上明らかであるにかかわらず、殊更に北村一夫として判決書に表示したのは、すなわち、刑事訴訟規則第五十六条に違反したものであり、この違反は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから破棄を免れない、というのであるが、右刑事訴訟規則第五十六条の規定は裁判を受ける者を特定するため裁判書には裁判を受ける者の氏名、年令、職業及び住居を記載しなければならない旨を定めているものと解すべきところ、本件記録によれば、被告人北村は警察署及び検察庁における取調以来引き続き北村一夫と称して来たため起訴状にもその氏名を北村一夫と記載され、被告人北村もまた原審において北村一夫の名義をもつて弁護人を選任し、原審公判廷においてもあえてその氏名を訂正しようとした形跡がないのであるから原判決が被告人北村の氏名を北村一夫と表示したからといつてその特定を妨げるものということはできない。もつとも、被告人に対する身上調査に関する照会書の回答欄に千葉県木更津市役所の回答として北村数男なる氏名の記載がなされており、かつ被告人森保に対する詐欺被告事件の原審第六回公判廷において証人として出廷した際北村一夫こと北村数男として尋問を受けていることが認められるのであるから原判決が被告人北村の氏名を北村一夫こと北村数男と表示するのがより妥当な措置というべきではあるが、原判決が前記のごとく同被告人の氏名を単に北村一夫と表示しても何ら判決に影響を及ぼすべき法令の違反があるものということはできないものといわなければならない。畢竟論旨は理由がない。

(花輪 山本 下関)

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