大判例

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東京高等裁判所 昭和29年(う)3057号 判決

被告人 宮沢信

〔抄 録〕

論旨第二点について。

刑事訴訟規則第百十五条には「証人に対しては、まず、その人違でないかどうかを取り調べなければならない。」と規定し、これを「人定尋問」と呼ぶことにしており、同規則第百九十六条には、「裁判長は、検察官の起訴状の朗読読に先だち、被告人に対し、その人違でないことを確めるに足りる事項を問わなければならない」と規定し、これを「人定質問」と呼んでいて、右人定尋問と人定質問とを区別していることは、所論のとおりであつて、記録を調査するに、原判決がその判示事実認定の証拠として、大木源次・三尾雄一に対する裁判官の各証人尋問調書を挙示していること、及び右各証人尋問調書中には、いずれも証人に対して人定質問を行つた旨の記載があることもまたすべて所論のとおりである。そこで所論は、右各証人尋問調書の記載によれば、右各証人の尋問に際し、刑事訴訟規則第百十五条所定の人定尋問を行わなかつたことに帰し、適法な手続を履践しなかつたことになるので、右各証人尋問調書は無効である旨主張するのであるが、しかし、右の人定尋問と人定質問との差異は、現行刑事訴訟法において、被告人には、黙秘権を認めるが、証人には、一定の場合に証言拒絶権を認めるだけで黙秘権を認めないところから生じた差異であつて、その実質内容が、いずれも、相手方に対し、その氏名・年齢・職業・住居等をたずねて、その人違でないかどうかを確めるにあることについては、両者間に相違がないのであるから、たとえ証人尋問調書に人定質問を行つた旨の記載があつても、その調書の記載内容により、証人に対して人違でないかどうかを取り調べた事実の認められる以上は、刑事訴訟規則第百十五条所定の人定尋問が行われたと認めるに妨げないものというべきところ、前示各証人尋問調書においては、いずれもその記載内容により、証人に対して、その人違でないかどうかを取り調べた事実が明認しえられるのであるから、該証人尋問調書には、この点について所論の瑕疵があるものということはできない。

註 本件破棄は量刑不当。

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