大判例

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東京高等裁判所 昭和29年(う)3132号 判決

被告人 山口徳次 外

〔抄 録〕

A弁護人第二点乃至第四点及びB弁護人の控訴の趣意について。

原判決挙示の証拠を綜合すれば原判決認定の事実は優にこれを認めることができ、記録を精査検討しても原判決に事実誤認乃至理由にくいちがいは存しない。弁護人は本件において公正なる価格とは如何なる価格であつたか確定し難く、少くとも原判決がこれを二百三十万円と認定したのは誤りであつて、当局の見積価格は百九十万二千九百円であつたのであるから真実は二百万円位であつたのである、と主張するけれども、いわゆる公正なる価格とは前記のごとく、公正なる自由競争によつて形成せらるべき落札価格をいうものであるところ、本件においてその公正なる価格を確定し得なかつたことは事前に被告人ら両名及び原審相被告人橋本光次らの間に本件差押物件の入札価格につき談合が行われた結果にほかならないのである。それゆえ原判決が本件公売の公正なる価格を二百三十万円と認定したものでないことは原判決を検討すれば自ら明らかなところである。しこうして、本件差押物件に対する当局の見積価格が百九十万二千九百円であつたことは所論のとおりであるが、右は関東信越国税局長大槻義公作成警視庁捜査第二課長宛昭和二十八年三月十四日付捜査関係事項照会に対する回答書によれば、その算定基礎は担当官による価格評定によるほか、安田信託銀行株式会社に評価を依頼し、主として鑑定価格を採用決定したものであり決定に当つては公売時における公売財産の現況による需給関係を勘案四割の評価減を必要とするという鑑定人の意見に従い最終決定見積価格としたことが認められ、同書添付の見積価格評定表の記載によれば本件差押物件に対する担当官見積価格は三百五万五千九百二十円であり、安田信託銀行株式会社の昭和二十七年十月九日付評価書(写)によれば本件差押物件によれば本件差押物件に対する評価額総計は三百二万一千四百六十五円で、この評価は当時の売買時価を考慮して評価したというのであるから、前記見積価額百九十万二千九百円はいわゆる公売入札における当局の最底見積価額であつて、当時の時価は約三百万円余であつたことが窺われるのである。しかも、原審相被告人橋本光次は本件談合の結果二百万九千五百円で入札して落札し、その上更に被告人らに対し現金二十二万円を支払つていることは記録上明らかなところであるから右橋本光次は本件差押物件を少くとも二百二十二万九千五百円以上に評価していたことはこれを窺うに十分であり、若し本件において公正なる自由競争によつて入札が行われたならばその落札価格はおそらくは二百三十万円前後におちつくことも考えられるのであつて、少くとも二百万円位でないことはこれを窺うに十分であるから所論は到底採用し難い。されば、本件被告人らの所為は本件公売入札における公正なる価格を害し、且つ不正の利益を得る目的をもつて談合したものというのほかなく、原判決には所論のごとき違法はいささかも存しない。論旨は理由がない。

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