東京高等裁判所 昭和29年(う)3241号 判決
被告人 鵜沢武雄
〔抄 録〕
弁護人の控訴趣意第三点について。
原判決がその法令適用として刑法第四十五条前段を明示していないことは論旨の指摘するとおりであるが原判決が原判示第一、二の罪を併合罪の関係にあるものとしていることは法令の適用として刑法第四十七条第十条を掲げていることからみても自ら明らかであり、かかる場合においては刑法総則の規定である刑法第四十五条前段の如きは必ずしもこれを明示する必要はないものと解すべきである。次に論旨は原判決が刑法第十四条を適用していないのは擬律に錯誤があると主張するけれども刑法第四十五条前段の関係にある併合罪中の一罪について刑法第四十三条による未遂減軽をなすべき場合には先ずその罪の法定刑につき同法第六十八条第六十九条等により減軽をなしたうえその刑と他の刑とを刑法第十条により比較しその重い刑につき併合罪の加重をなすべきであることは刑法第七十二条により明白である。従つて本件の如く傷害罪と強盗未遂罪とが併合罪の関係にあり前者につき懲役刑を選択し後者について未遂減軽をなしたときには前者の懲役刑の長期は十年であり後者の長期は七年六月であるから前者の刑をもつて重いとすべきであり、これに刑法第四十七条による併合罪の加重をなしてもその長期は十五年に至るに過ぎない。それゆえ原判決が法令の適用として刑法第十四条を掲げておらないのは寧ろ当然であつてこれを非難する論旨は固より採用の限りではない。