大判例

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東京高等裁判所 昭和29年(う)3274号 判決

被告人 渡辺勉

〔抄 録〕

論旨第二点。

原判決が認める第二事実は、被告人は新潟燃焼器具名義で液体燃料ストーブの製造販売を営んでいたものであるが、右ストーブの製造者は毎月その製造場から移出した物品につきその品名毎に数量及び価格を記載した申告書を翌月一〇日迄に政府に提出しなければならないのに、昭和二八年一二月一八日頃株式会社丸三商店等をして製造させたストーブ七個を新潟市西堀前通二番町七一二番地三和興業株式会社に移出販売し乍ら所定の申告書を提出しなかつたというのであり、本件起訴事実もこれと全く同一である。

而して起訴状は右事実に対する罰条として物品税法第一八条第一項第二号を引用しているのであつて、これは不正の行為によつて物品税を逋脱した所為に対する罰条なのである。

しかし乍ら本件起訴事実も亦原判決が認定する事実と共に判示自体からは不正の行為によつて物品税を逋脱した旨の事実摘示とは到底認め得ないところである。

ところで、原審第二回公判(昭和二九年一〇月一一日附)調書の記載によれば、原審検事は本件は物品税の逋脱犯として公訴を提起したものではなく物品税法所定の申告をしなかつた無申告犯として公訴を提起したものである旨陳述しているのである。

さればこそ本件告発状には右ストーブ七個の移出販売を申告せず、物品税五千二百円を逋脱した旨記載されているのに本件起訴状にはこの記載は除かれているのである。これらの点から考えるなら本件右公訴の提起は物品税の逋脱犯としての事実を起訴したものではなく、単なる申告義務懈怠の事実を起訴したものと認めるべきものである。従つて罰条の記載は物品税法第一九条第一号を引用すべかりしものを誤つて同法第一八条第一項第二号を引用したものと認めるを相当とする。

なお、同法第一八条第一項第二号違反の物品税逋脱犯ならば、別に申告義務を規定した同法第八条第一項を引用する必要はないのに(同法第八条第一項違反の処罰規定が同法第一九条第一号なのである。)これを引用した点から見ても右罰条の引用は誤であつたことが窺える。

しからば、原判決は右公訴事実と同一の事実を前記の如く認定し乍ら物品税法第一八条第一項第二号を適用したのは同法第一九条第一号を適用すべきものを誤つたもので正に法令の適用を誤つたものと認めざるを得ないのである。

而して両法条を比較すれば、物品税法第一八条第一項第二号所定の刑は五年以下の懲役若くは五〇万円以下の罰金であるところ、同法第一九条第一号所定の刑は一〇万円以下の罰金であつて、前者の刑が後者の刑より重いことは刑法第一〇条によつて明白なのであるから、この法令適用の誤は勿論判決に影響を及ぼすものであり、論旨は理由がある。

(裁判長 判事 武田軍治 判事 坂本謁夫 判事 石井文治)

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