大判例

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東京高等裁判所 昭和29年(う)428号 判決

被告人 寺田惣一郎 外

〔抄 録〕

論旨第一点。

原判決が引用する証拠によれば、原判示事実を十分認めうるのである。

原審はその取り調べた証拠に現われた事実のうち原判示事実に反するものはこれを採用しなかつたものと認められるが、まづ所論大金六郎の昭和二八年五月九日附検察官供述調書の当否につき按ずるに、供述調書は供述者が供述したところを録取するものであるから、通常は供述者の供述とこれを録取した調書の作成年月日は同一時である。しかしこれは必ず一致しなければならないもので、同一人に対する数日に亘る取調の場合は毎日ごとに供述調書を作成しなければならないという規則は存在しないのであるから、数日に亘つて供述者をして供述させた後日をあらためこれを一括録取して調書を作成すること即ち調書作成の日が供述の日よりもおくれることも当然許されるものと解すべきである。

ところで右供述調書冒頭の記載によると昭和二八年五月九日の一日で検察官は大金六郎を取り調べその供述を録取して調書を作成したものであるが如くにも見える。しかし同調書の丁数、記載容量から検討すると、昭和二八年五月九日の一日丈で同人を取り調べその供述したところを録取したものとは認め難いことは所論のとおりであるが、結局はそれより以前から同人は取り調べられていてその供述したところを昭和二八年五月九日に一括録取して調書が作成されたものと認めるのを相当とし、このような調書は何等形式的にも違法の調書とは認められない。しかして右調書は五月九日の一日で原本と共に謄本を作成することも必ずしも実験則上不可能とは認められない。―原本が作成されると直ちに所謂原紙を作成すれば同一日にでも数通の謄本の作成は可能である。―なお仮に謄本が印刷作成された日は原本作成の日より数日後であるのに原本作成の日と同一日に謄本も作成した如く日附を記載したとしてもただそれ丈でその謄本が無効のものとは認め難い。

さればこそ原審第四回公判調書記載にもあるとおり原審において被告人側は右大金六郎の検察官供述調書を証拠とすることに同意しない理由としてあげるところは同人の公判供述の方が真実性があるからというのであつて調書自体或は謄本作成が違法であるとは何等主張していないのである。

さて三村勇、大金六郎の各検察官に対する供述調書の任意性の有無を検討するに、三週間に亘る勾留は心身に相当の打撃を与えるものであることはまことに所論のとおりと認めうる。しかし何れも供述拒否権のあることが告げられており、又録取された供述の相違ないことも認めて夫々署名指印をしていること及びその供述内容の自然性のあること前後脈絡が整つていること等に徴すれば各供述は任意性のあるもので、強制に基くものとは認め難い。のみならず信憑性も同人等の公判供述に対比すれば十分認められる。

原審がこれを証拠に採用したのは相当であつて実験則違背は認められない。

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