大判例

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東京高等裁判所 昭和29年(う)505号 判決

被告人 高音吉

〔抄 録〕

論旨第一点について。

窃盗が既遂となるには財物に対する他人の占有を侵しその財物を犯人の支配下に移すことが必要であることは所論のとおりである。原判決の挙示した証拠によれば、被告人は関明次郎方店舗内において、服地の陳列台の上にあつた茄子紺ギヤバジン服地一巻を、被告人の着ていたオーバーの下に潜ませその上から服地をかかえてその場を離れ、出口に向つて一、二歩歩いたとき、制服を着て折柄同店舗前を通りかかつた警察官と眼を見合わせたので、被告人は再び店内に引返したことが認められるから、その服地に対する前記関明次郎の占有は侵され完全に被告人の支配下に移転したことは明らかであつて、従つて窃盗は既遂となつたものであることは言を俟たない。仮りに品物が大きく重かつたため引返して元のところへ返したとしても或は店員黒田幸子が監視を継続していたとしても、窃盗既遂の成立にはなんらの影響はない。従つて被告人の所為を窃盗の既遂と認めた原判決には所論のような違法はない。論旨は理由がない。

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