東京高等裁判所 昭和29年(う)637号 判決
被告人 青木忠一
〔抄 録〕
ところで、放火罪の構成要素たる目的物件の焼燬とは、犯人の放つた火が目的物件に燃え移り、爾後、その火が独立して燃焼を継続することのできる状態に達したときをいうものと解するを相当とするのである。いま、原判示七の事実に照応する原判決挙示の証拠中の原審検証調書の記載を検討するに、それには「四本目の垂木の軒寄先端五、六寸の部分が焦げており」とあること、まことに所論のとおりである。しかし更に、その他に屋根裏が全部で目測約二坪程焼けたと立会人大高情作が指示説明した旨の記載があるのであるから、まさしく、右にいう焼燬の観念を以て律すべき事実に該当するものといわなくてはならない。してみれば、原判決が右記載より判示七の放火の結果たる事実を判示のごとく認定したとて、毫も、違法を以て目すべき筋合ではない。そこで、原判決には理由のくいちがいのあることなく、論旨第二点は理由がない。
註 本件被告人の犯行当時の精神状態の認定の誤りをもつて破棄。