大判例

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東京高等裁判所 昭和29年(う)673号 判決

被告人 邵公侠

〔抄 録〕

よつて按ずるに原審は被告人に対する「被告人はパナマ船イースタントレーダー号の乗組船員であるが外国産貴石並びに外国製腕時計に対する関税及び物品税を逋脱しようと企て昭和二十八年十月二十一日頃香港において右イースタントレーダー号船内に外国産貴石四百七十三個外国製腕時計千十七個を隠匿した上、同年十一月二日横浜港に入港しもつて右貴石並びに腕時計に対する関税八十五万三千六百円、物品税七十二万二千八百十円逋脱の予備をなしたものである」との公訴事実に対し関税逋脱予備罪の成立のみを認め物品税法違反の点については被告人の右行為の段階を以てしては未だ物品税法第十八条第一項第二号の「物品税の逋脱を図りたる者」には該当しないものとして無罪と認定していることは所論の如くである。そして本件貴石たるルビー及びアレキサンドライトが物品税法第一条第一種第一号、腕時計が同条第二種第四十八号の物品税課税物品であり、正規の通関手続を経て輸入される場合には関税定率法第二条の規定による課税価格に関税に相当する金額を加えた金額に対し物品税が課せらるべきものであることは同法施行規則第十二条の規定により明らかであり且つ正規の手続を経ない場合にあつても物品税課税物品たる以上輸入せられた場合あるいは輸入しようとして遂げなかつた場合にはこれと同様に解すべきであり、また被告人は昭和二十八年十月二十一日前記イースタントレーダー号が香港に碇泊中すでに関税その他を免れるため同人の船室及び隣室の検数員室の板壁の内側に前記時計及び宝石を袋にいれて隠匿し翌月二日横浜港に入港したものであるから関税物品税等逋脱せんとする目的でその準備行為をなしていたことも明らかである。そして関税法第七十五条第二項は明文をもつてかくの如き予備をなした者をも処罰する旨を規定しているのであるから被告人の所為が関税法第七十五条第二項に該当することは勿論であるけれども、ひるがえつて物品税法第十八条第一項第二号をみるに同号は単に「詐欺その他不正の行為を以て物品税を逋脱し又はその逋脱を図りたるもの」と規定するにとどまるから物品税逋脱犯の既遂罪未遂罪が処罰の対象となることは明らかであるけれどもその予備罪を含むか否かは全く不分明といわざるを得ず、むしろ物品税法全体のたて前から考えれば物品税法逋脱罪の予備は処罰の対象としていないものと解するのが合理的であると考えられるから原審の判断は正当であり論旨は理由がないといわなければならない。

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