東京高等裁判所 昭和29年(ツ)6号 判決
上告人 浦野徳十
被上告人 河井卯三郎
〔抄 録〕
原判決は、上告人主張のように、上告人所有の長野県上伊那郡宮田村字大平千石平尻ナシトヤコ寺沢横ズヤ清水峠四千七百四十六番の七百四の山林と、被上告人所有の同番の六百六十九の山林との分筆した当時の本来の境界は、原判決添附の図面表示の(イ)点と(ハ)点を結ぶ直線であつたが、被上告人が右直線を越えて、右図面表示の甲点及び丙点を結ぶ直線までの間の部分の山林を時効によつて取得したから、上告人所有の右七百四の山林と被上告人所有の六百六十九の山林との境界は、現在においては右甲点と丙点を結ぶ直線であると判示している。しかしながら、本来地番の境界というものは、地番を合併したり分割する手続によつて創設されることはあるが隣接している地番の一部を取得時効によつて取得したという場合においても、所有地の範囲は、一方はそれだけ拡張され他方はそれだけ縮少するということは当然起るが、その場合においても、時効取得したものは、隣接地番の一部についての所有権を取得したに止まり、いぜんから所有していた地番の土地の範囲が当然拡張し、隣接地の範囲が当然縮少して、地番の境界が移動するものでないことは、地番の性質からして明なところである。本訴が上告人の所有土地の範囲の確認の訴であれば、―控訴代理人は、原審において(記録四九七丁)、「本件は係争山林の境界に面した部分の所有権を主張し、これに基いて境界の確定を求めるものである」と主張している―格別原判決の事実の記載によれば、本訴を境界確定の訴であるとし、その理由と主文の判示によれば、上記のとおり、七百四の山林と六百六十九の山林との境界が(イ)点と(ハ)点を結ぶ線から甲点と丙点を結ぶ線に移転したと判示しているのである。右判示が違法であることは上段説示により明なところである。