東京高等裁判所 昭和29年(ネ)1412号 判決
まず本案前の抗弁について判断するに、家庭裁判所に於てなされる相続放棄の申述の受理は、要式行為である相続放棄のあつたことを公証する行為に過ぎないものであり、相続放棄の有効無効を確定する裁判ではない。従て相続放棄の申述が受理された後でもこれによる放棄の効力を訴訟手続において争うことができるものと解する。よつて、控訴人は昭和二十四年七月十九日新潟家庭裁判所柏崎支部に本件相続放棄の申述をなし同年同月二十二日申述受理の審判がなされ同月二十四日右審判の告知があつたから、右審判は既に確定しており、一事不再理の原則に基き本訴は却下すべきものであるとの被控訴人の主張は理由がない。
また前記認定のとおり真正に成立したと認められる甲第七号及び前記認定に供した資料を綜合すれば、本件相続放棄の申述受理の審判の告知が昭和二十四年七月二十四日なされたことを認めることができるのみならず、元来相続放棄は裁判所に対して申述することによつてその効力を生じ、受理審判の告知の有無に左右されるものではないから、右審判の告知がないことを前提とする控訴人の主張は理由がない。