東京高等裁判所 昭和29年(ラ)196号 決定
一、抗告人がその主張のような賃貸借契約あることをもつてしてはいまだ競売法上利害関係人ということを得ないことは後記(二)説明のとおりであり、また抗告人が本件競売期日において競落人森本と競落を争い、その意味において競買人といい得べきものとしても、抗告人は本件競落を許さないことを求めるものであつて、競売法第三十二条の準用する民事訴訟法第六百八十条第二項の規定する「競落ヲ求メ之ヲ許スベキコトヲ主張スル」ものではないことその主張自体明らかであるから、抗告人は法律上本件競落許可決定に対し適法に即時抗告をし得べきものではない。
二、抗告人は本件物件につき昭和二十八年十二月一日所有者猪俣功との間に期間同日より十カ年、賃料一カ月金五千円毎月二十五日支払の約束で賃貸借契約を結んだものであると主張する。しかしながら右契約はすでに本件建物につき抵当権設定登記がなされた後であるのみでなく、本件競売開始決定登記の後であることは記録上明らかであり、その期間は民法第六百二条の期間を超えるものであり、しかもその賃借権につき登記あることはなんら認めるべきものがなく、建物の引渡すらないことは前記(一)の抗告理由書中において抗告人の自認するところであるから、抗告人の右賃借権はいかなる意味においても抵当権者その他の第三者に対抗し得べきものではない。このような賃借権者は競売法上利害関係人について限定をした同法第二十七条第三項各号のいずれにも該当しないものといわなければならない。けだし同条同項第一ないし第三号及び第五号に該当するものでないことは自明であつて、同第四号「不動産上権利者トシテ其権利ヲ証明シタル者」にあたるかどうかだけが問題であるところ、たんに所有者に対してのみ契約上の権利を主張し得るに止まり、抵当権者その他の第三者に対してはその権利を主張し得ないものは、競売手続上なきにひとしく、抵当権者は当然これを無視し得るのであつて、かかる者を競売手続に関与せしめるなんらの理由はないから、右にいう「不動産上権利者」とは当然その権利をもつて抵当権者従つて競落人に対抗し得るものをさすと解さなければならないからである。故に抗告人は本件競売手続において適法な利害関係人となることはできないものであつて、本件競売手続にその主張のような違法の存するかどうかに関係なく、抗告人は本件競落許可決定に対し即時抗告をなし得ないものといわなければならない。