東京高等裁判所 昭和29年(ラ)222号 決定
記録によれば、相手方は訴外栗原善雄を仮処分債務者とする千葉地方裁判所館山支部昭和二九年(ヨ)第六号仮処分決定(以下仮に第一次の仮処分という)により、昭和二九年一月二三日別紙目録記載の伐木約三百五十石にたいし、占有、搬出禁止等の仮処分を執行したところ、抗告人は右仮処分決定の執行にたいして同裁判所支部に民事訴訟法第五四九条による第三者異議の訴を起し(同裁判所昭和二九年(ワ)第二号事件)、かつ、右仮処分決定の執行停止執行処分取消の決定を申請し(同庁昭和二九年(モ)第四号)右停止のために金十万円、取消のために金十万円の保証を立てて申請通りの決定を得、昭和二九年一月三〇日これを執行したがその後、相手方が、抗告人を仮処分債務者として第一次の仮処分の目的物件につき、仮処分決定を得て(千葉地方裁判所木更津支部昭和二九年(ヨ)第一号事件、以下、仮に第二次仮処分という)同年二月四日その執行をしたので、抗告人は第二次仮処分の執行によつて前記執行停止並に執行処分取消決定は取り消されたと同じ結果となつた、他方抗告人は同年二月一九日、前記館山支部昭和二九年(ワ)第二号第三者異議事件を取下げ前述の抗告人の供した担保はその事由がやんだとして民事訴訟法第一一五条第一項により、同年四月九日担保取消決定を申請し、原裁判所は同日これを容れてその決定をしたところ、相手方がこれにたいして即時抗告を申立てたところ原裁判所は再度の考案にもとずいて同年五月二〇日右担保取消決定を取消し、抗告人の申請を却下したものであることが明らかである。
この事実からすると、抗告人は本件の保証を立てて得た仮処分執行停止並に執行処分取消決定によつて昭和二九年一月三〇日から同年二月四日までの間、相手方の得た仮処分決定の執行をさまたげたこと明かである。ところが本案の訴は取下によつて終了し、抗告人の異議の主張が正当であつたかどうかは確定しないままであるから、この執行停止が正当であつたかどうか、つまり右停止によつて相手方に損害を生じたとしても抗告人に責任がないという場合であるかどうかは明かでなく、また損害が生じなかつたと認めるべき資料はなんら存しないのであるから、抗告人の立てた保証について民事訴訟法第一一五条第一項の「担保ノ事由止ミタルコト」は証明せられないというのほかはない。したがつて抗告人の保証取消決定申請は理由がないとしてこれを却下すべきものである。これと同趣旨の原決定は相当である。