東京高等裁判所 昭和29年(ラ)228号 決定
裁判所法第三三条第一項第一号の記載によれば、簡易裁判所は行政処分の取消又は変更の請求を除いて、行政処分の無効確認を求める訴訟には管轄権を有するように読めるが、同法が施行されたのは昭和二十二年五月三日で、行政事件訴訟特例法が施行されたのは昭和二十三年七月一五日であつて、裁判所法施行当時簡易裁判所の管轄から除いて地方裁判所の管轄にした「行政処分の取消又は変更の請求」という意味は、行政事件訴訟特例法第二条でいう「行政庁の違法な処分の取消又は変更を求める訴」と同一の意味ではなく、同法第一条にいう「公法上の権利関係に関する訴訟」の少くともその一部をも含んでいると解するのが、「行政処分の取消又は変更の請求」を地方裁判所の管轄に属せしめた法の精神に合する解釈である。このことは、右二つの「行政処分の取消又は変更の請求」という同じ語が、別の意味をもつているのは誤解を招き易いので、今度裁判所法第三三条が改正されて公法上の権利関係に属する訴訟が簡易裁判所の管轄に属しないことが明白になつた趣旨からしても、判ることである。そして行政処分の取消又は変更を求める請求も、行政処分の無効確認を求める請求も、共に行政処分の瑕疵の存することを理由としてその効力を否定することを目的とする点において異ることなく、その瑕疵の程度が権限ある行政庁の処分と認め得られない等重大な場合は無効確認の請求となり、この程度に至らない比較的軽微な場合は取消の請求となる差異があるのにすぎないのであつて、そのいずれに属するかの限界は具体的事案においてはこれを判定するに困難を示す場合も少くない程度に相類似するものである。(無効確認の請求は取消の請求をも包含するとの見解をも生ずるのもかような理由からである。)かような点と前示説明とを併せ考えるときは改正前の裁判所法第三三条第一項第一号は、行政処分の無効確認を求める訴を行政処分の取消又は変更を求めるいわゆる抗告訴訟と同様、簡易裁判所の裁判権から除く趣旨であると解するのが相当である。