大判例

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東京高等裁判所 昭和29年(ラ)399号 決定

よつて按ずるに、本件競売期日の公告に賃貸借に関する事項として所論の記載があることは記録上明らかであり、これは裁判所が所属の執行吏に命じてなさしめた賃貸借取調の報告書にもとずくこともまた明らかであるところ、抗告人提出の西浦富代の証明書、横浜市磯子区長の証明書(三通)の記載によれば、右賃貸借の賃料の記載は事実に相違することを認め得ないわけではない。しかし右賃料が抗告人の主張どおりであつたとしても、これによつて直ちに本件において適法な公告がなかつたものとするのは相当でない。西浦富代の証明書によれば同人が本件物件を賃借したのは昭和二十七年十一月一日で、本件競売の基礎たる抵当権設定登記(同年八月六日)の後であるが、右賃貸借は期間の定めのないものであるから(前示報告書参照)、賃借人はこれをもつて抵当権者従つて競落人に対抗し得べきものと解せられるところ、賃借人がその賃借権をもつて対抗し得る範囲は競売期日の公告に記載せられたところによるものではなく、民法及び借家法の規定にもとずき現実に定められた契約内容によるのである。従つて右公告の記載が事実に相違することは、賃貸借の対抗という上においてはなんら当事者を拘束するものではない。ただ競売期日の公告にこれらの事項を表示するのは、競買人をしてその対抗を受けるべき賃貸借の内容をあらかじめ知り、それによつて競売物件に附すべき自己の評価の参考とするに過ぎないのである。本件においては公告における賃料の記載は実際より高いのであるから、競買人がこの公告の記載を信ずることは競売物件の評価をしてより高価ならしめるものというべく、真実の賃料が公告されていたならばその評価はもつと安くなつていたであろう。この意味において、本件賃料の記載は所有者である抗告人にとつて利益にこそなれ、不利益になることはないといわなければならない。公告におけるかかる記載のあやまりはまた本件競落を許さないほどのかしとするにはあたらない。所論は理由がない。

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