東京高等裁判所 昭和29年(ラ)88号 決定
抗告人主張の抗告の理由について按ずるに、本件記録によれば、抗告人は大賀茂に対し本件不動産について、金二百万円の債務について抵当権を設定すると共に、停止条件付の代物弁済契約をなし、それぞれその旨の本登記又は仮登記手続を了したことを認めることができる。右のように一個の債務について、同一物に対し抵当権を設定すると共に、停止条件付の代物弁済契約がなされたときは、債権者は、弁済期が過ぐるも債務の支払を受けられなかつたときは、抵当権を実行するか、代物弁済契約によつて物件を取得するかは、この選択に委せられ、特に代物弁済契約で目的物件を取得する旨の意思表示をなさないときは、債権者は当然抵当権を実行し得る権利を有していると解するを相当とする。本件の場合は、大賀茂が本件不動産について代物弁済契約で目的物件を取得する旨の意思表示をなすことなく、競売を申立てたことは、本件競売申立書初め本件記録によつて明であるから、同人の本件競売の申立は適法であるといわなければならない。