東京高等裁判所 昭和29年(ラ)97号 決定
しかし仮処分において裁判所が申請人に立つることを命ずる保証の額は、事件における被保全請求権の額や、保全の対象たる物件の価格や、当該事件における疏明の程度や、当該保全処分により蒙るかも知れない被申請人の損害等諸般の事情を斟酌したうえ定むるものであつて、専ら裁判所の自由裁量に任されたところである。したがつてその額の確定が実験則に反し不当なりと認めらるるが如き場合でないかぎり、保証額の高低を批議して保証決定を非難することはゆるさるべきものではないのである。本件において原審は金八十万円の保証を立つべきことを抗告人に命じた基準についてなんの説明を与えていないのであるが、記録から窺われる抗告人の請求または仮処分の理由の疏明程度その他諸般の事情に徴すると、原審のなした保証決定が実験則に反し不当であるとは遽かに断じ難く、抗告人が引用する他事件における保証の額は本件を律するに適切なる資料と認め難い。