大判例

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東京高等裁判所 昭和29年(行ナ)23号 判決

本件の訴が適法であるかどうかについて判断するに、本件の訴は、原告の請求にかゝる商標登録拒絶査定不服抗告審判事件について、特許庁がなした審決に対してなすものであつて、かかる訴においては、特許庁長官を被告としなければならないことは、商標法第二十四条によつて商標に関し準用せられる特許法第百二十八条ノ三本文の規定するところである。

原告代理人が当初当裁判所に提出した訴状には、本訴の相手方を「被告特許庁右代表者特許庁長官石原武夫」と記載したが、その後当裁判所に提出した各準備書面には、「被告特許庁長官石塚武夫」または「被告特許庁長官」と記載している。これらの事情をつぶさに考察すれば、原告代理人が当初訴状に、被告の表示を前述のように記載したのは、むしろ「被告特許庁長官石原武夫」となすべきのを誤つて表示したものと解するのを相当とし、原告代理人の真意が、始終を通じ、前記法条の規定するとおり、「特許庁長官」を被告とするものであつたことは、その記載自体から、これを十分うかがうことができるから、本訴は適法であつて、被告代理人の本案前の主張は、これを採用することができない。

〔編註〕 本判示は被告の左の如き本案前の主張に対するものである。

本件訴状は被告を特許庁として提起したもので、特許法第百二十八条の三前段の規定に違反して不適法である。原告代理人は、その後訴状請求原因欠缺補正書において、被告の表示を特許庁長官石原武夫と記載しているが、右は民事訴訟法第二百三十二条の規定により、請求の基礎の変更となることは明らかである。しかも右補正書は、これが裁判所に提出された時においてその効力が生ずることは明らかであるから、右請求の基礎の変更すなわち被告を特許庁長官となした効力は、本件抗告審判の審決を受けた日より三十日を経過した後に有効となり、右の訂正は許容せられるべきものではない。

なお行政事件訴訟特例法第七条による被告の変更については、重大なる過失のある場合、これをなし得ないことは同条但書の明定するところであるが、本件訴訟代理人は、特許法律関係の手続を専業とする弁理士二名と、一般法律関係の訴訟手続を専業とする弁護士一名であつて、これら専門業者は、拒絶査定不服抗告審判の審決を不服として訴訟を提起する場合、その相手方を特許庁長官としなければならないものである位のことは、一応承知されているものといわなければならないから、本件訴訟において、被告を特許庁とすることは、重大な過失に相当するものというべく、右変更は容認せらるべき範囲を越えたものといわなければならない。

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