東京高等裁判所 昭和29年(行ナ)51号 判決
別紙第一に表示の原告使用の商標を見るに、同商標は黄色の横長方形の地に赤線を以て同形の輪廓を書き、その内部左右両端に縦に細長い短冊形部分を残し、中央の稍々横に長い横長方形部分には赤色地に黒色で左翼を左上方に、右翼を右下方に拡げ、斜右上方に首を上げ、両脚を左下に延ばして飛ぶ一羽の丹頂鶴を一杯に描き、右鶴の胴部を太細二重の円形黒色輪廓内に「鶴」の大字を黒書したものを以て覆い、右鶴の上部には黒色で「丸鶴印」の三字を、又下部には黄色で「東京燐寸工業株式会社」の十字を、共に左横書し、前記左右の短冊形の部分は黒く塗り、右方の黒色部分には「優良精選」と、左方黒色部分には「安全燐寸」と、夫々黄色で縦書して成るものであることが認められる。次に成立に争のない甲第三号証によれば、被告の登録第八七九六四号商標は旧第五十四類摺附木(現行商品類別第五十四類燐寸)を指定商品とし、大正六年六月十二日に登録出願され、同年九月十一日に登録され、昭和十二年二月十五日に存続期間更新の登録がされた着色限定のものであることが認められ、別紙第二に表示の同商標を見るに、その構成は白地に赤色の太い線で書いた横長方形の輪廓内に、更にこれと接して黒色の細い線で書いた横長方形の輪廓を重ね、その内部を左右両端には縦に細長い短冊形の部分、中央には稍々横に長い長方形の部分ができるように、縦の二本の黒線で区劃し、右中央の横長方形内に一杯に首を稍々左に向けて正面に向つた丹頂鶴が両翼を開いて左右から上方へ上げ、両翼の先端が殆ど触れる位に接近し、全体として円形となるようにしたものを描き、尚右鶴の図形の左右両側から下方にかけて雲の模様で囲み、鶴の頂部を赤色にし、又左右の短冊形の部分は赤色の地を細く周囲に残して黒色に塗りつぶし、向つて右の方の黒色部分には「上等細軸」の文字、向つて左の方の同部分には「徳用燐寸」の文字を、それぞれ白抜きにして顕出したものであることが認められる。よつて原告の本件商標と被告の右商標とを比較するに、両者の前記の各構成から見て、外観上相類似しているものとすることはできないけれども、原告の商標はその主要部分と認められる前記の鶴の図とその胴部を覆う円形の二重輪廓内に鶴の字を大書して成る記号とにより、一般世人がこれを一見して「マルツル」又は「マルヅル」と呼ぶのが普通であると解されるところ、被告の商標では前記丹頂鶴が最も顕著に描かれてあつて人目を引き、且その形状が全体として円形となるように描かれてある為、一般世人がこれを一見した場合原告の商標と同様「マルツル」又は「マルヅル」と呼ぶのが最も普通であると解され、従つて両商標はその称呼が同一であるから、相類似するものといわなければならない。原告は被告の商標における鶴の図には前記雲の模様が存するが故に同商標は「ウンカク」又は「クモヅル」と称呼されるべきであり、従つて両者は称呼を全く異にしている旨主張するけれども、被告の商標から原告主張の通り「ウンカク」又は「クモヅル」の称呼が生ずるとしても、その事が前記の通り被告の商標から「マルツル」「マルヅル」の称呼をも生ずることを妨げるものではないから、右主張は認容することができない。又原告は被告の商標は登録第四二〇五八号商標(成立に争のない甲第二号証の四の一)と連合の商標として登録されたところ、同商標は「雲鶴火柴」の漢字を顕著に縦書して成るものであるから、登録第八七九六四号商標(成立に争のない甲第二号証の四の二)も以来取引者需要者間に「クモヅル」と称呼されて著名商標となつたのであり、この経過に徴してもその称呼は「マルツル」又は「マルヅル」でない旨主張するけれども、本件にあらわれたすべての資料によつても登録第八七九六四号商標が「ウンカク」又は「クモヅル」とのみ称呼され、絶対に「マルツル」又は「マルヅル」と称呼されることのない事態にあること認めるに足りない以上、仮に原告主張の通り同商標が取引者需要者間に「クモヅル」と称呼され著名商標となつているとしても、同商標から前記の通り「マルツル」又は「マルヅル」の称呼も生ずることがないとすることはできないから、右主張も認容するに足りない。尚原告は「マルツル」と「ツルマル」とが氏姓の「村松」と「松村」とが全然別個の人格者を指称しているからその称呼が全然別個であると同様、全然称呼を異にしているとして審決が「マルツル」と「ツルマル」とが称呼上「ツル」の部分と「マル」の部分とを顛倒した微差あるに過ぎないとしている点を非難するけれども、両商標は共に「マルツル」又は「マルヅル」の称呼を生ずるが故に相類似しているものとすべきこと前記の通りであるから、「ツルマル」と「マルツル」とが称呼上全く別個のものであると否とは、結局両商標の類否に関する前記判断に何等影響するものではなく、原告の右非難も採るに足りない。然らば被告の登録第八七九六四号商標の指定商品と同一商品に使用する原告の本件商標は被告の右登録商標の権利範囲に属するものというべく、前顕甲第三号証によれば、審決も又結局以上当裁判所の説くところと同趣旨を説いていることが認められ、審決が右理由の下に被告の権利範囲確認審判請求を認容したのは相当であり、之に反する見解に基く原告の請求は理由がない。
〔編註〕 本件に関する商標は左のとおりである。
<省略>
第一の商標
<省略>
第二の商標