大判例

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東京高等裁判所 昭和30年(う)1222号 判決

被告人 下村義了

〔抄 録〕

被告人の控訴の趣意(弁護人の上申書記載の説明を含む)のうち事実誤認の主張について。

一、被告人がレパスキーから米貨小切手四通を受領した事実の点原判決に挙示する被告人の原審公判廷における供述、被告人の検察官に対する供述調書の記載及びレパスキーの検察官に対する供述調書謄本の記載と、当審において取り調べた証拠とを総合すると、被告人が代表取締役をしていたアジアモーターズ株式会社は、自動車の輸出入、売買等を営業とする会社であるが、米国内の自動車販売業者と契約し、その代理店となり、本邦内においては自ら売買の当事者として米国産の自動車の買受注文をとり、売買契約を結び売買代金を受領し、その注文を米国内の販売業者に取り次ぎ、受領した売買代金を送付し、注文の自動車は、その販売業者から直接注文者に送付させる方法による自動車売買を業としていたものであるところ、昭和二十八年七月二日及び同年八月十三日の二回に、原判示のレパスキー及びその知人ザンブロウイッチから米国産自動車各一台の買受注文があつたので、被告人はアジアモーターズ株式会社の代表者として直接同人等と、右自動車の売買契約を結び、その代金及び契約金(代金の内金)としてレパスキーから原判示の米貨小切手四通を受領したものであつて、当該小切手の受取人を米国カリフオルニア在住の高橋儀一郎としたのは、被告人が、米国内の自動車販売業者アーネスト、インゴールド、カンパニーに対する代金支払の方法として、一旦被告人から右高橋に送付し、同人から右販売業者に支払をさせる便宜上の手段に過ぎないことを認めることができる。従つて、被告人の右小切手に関する行為は、所論のように単にレパスキーから高橋儀一郎に小切手を送付する際、事実上その送付行為を援助し、便宜を計つてやつたというものではなく、自らレパスキー及びザンブロウイッチとの契約の当事者として、自動車売買の代金又は契約金として受領したのであるから、被告人は右小切手受領と同時にその占有権を取得したばかりでなく、処分権をも取得したものといわなければならない。右自動車の売買契約がその後引渡不能のため解除されるや、被告人は、レパスキーに対しては自ら直ちに金二十万円を契約金の返済として支払い、またザンブロウイッチとの関係においては、当初の注文品と異なつた他の自動車を引き渡し、その差金は邦貨の約束手形を振り出し交付した事実が前掲各証拠により明らかであるが、この事実は即ち、被告人がレパスキー及びザンブロウイッチとの自動車売買の当事者であつたことを物語るものであり、前記小切手について処分権を有するものであることを裏付けるものである。

それ故被告人の前記小切手に関する行為は、外国為替等集中規則第三条所定の財産の取得に該当するものであり、同法条及び原判決所掲の各法条に該当することは疑ない。

なお、被告人はアジアモーターズ株式会社の代表取締役として前記の行為をしたものであるから、同会社の業務に関する行為であり、被告人は同会社の機関として前記小切手を取得したことになるのであるが、外国為替及び外国貿易管理法第七十三条には、違反者につき両罰規定が設けられているから、被告人は行為者としての責任を免れることはできない。而して本件は、被告人の行為自体のみが起訴されているのであるから、原判決が、被告人の行為についてのみ認定し、アジアモーターズ株式会社の責任又は同会社の機関としての被告人の行為であることについての判断を示さなくとも、あえて違法ということはできない。

また、原判決には、事実の摘示として、被告人が自動車売却の手付金及び代金として前記小切手を受領したと判示しているから、外国為替等集中規則第三条所定の財産の取得の具体的事実の摘示としては十分であつて、またその事実認定にも何等所論のような瑕疵はない。

(谷中 坂間 久永)

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