大判例

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東京高等裁判所 昭和30年(う)1568号 判決

被告人 大塚伊市

〔抄 録〕

一、論旨第一点について。

訴訟記録によると、被告人は三田幸一に対し原判示日時頃五回に亘り、館林市大字新宿二百十八番地の被告人の自宅で判示数量の覚せい剤を判示代金で譲渡し、三田幸一はこれを当時同人の同居先であつた同市大字館林四十八番地山本みえ子方に持ち帰つたことを認めることができる。従つて原判決が本件犯罪の場所を右山本みえ子方と認定したのは、犯罪の場所に関する事実の認定を誤つたものといわなければならない。しかし犯罪の場所は刑罰法令各本条において特に犯罪構成要件としている場合の外、一般には罪となるべき事実ではなく、只犯罪事実を特定するために判決理由中に記載するのであつて、本件においては犯罪の場所は犯罪構成要件に属しないのは勿論、犯罪事実の特定についても、被告人が三田幸一に原判示の如く五囘に亘つて覚せい剤を讓渡したという事実については、その日時、数量金額等により犯罪の場所を除くも優にこれを特定し得られるのであるから、右犯罪の場所に関する事実の誤認は結局判決に影響を及ぼさないものと認めるべきである。論旨は、理由がない。

二、論旨第三点について。

原判決が証拠の部分において、「被告人が判示のように短期間内に同種行為を反覆累行した事跡」という項目を掲げていることは所論の通りである。しかし原判決はこれを証拠として挙示したものではなく、被告人の判示所為は常習として行つたものであることの説明として記載したもので、即ち原判決は被告人が原判示第一及び第二の如く短期間内に二十数回に及ぶ同種の犯行を反覆して犯した事実を証拠によつて認定し、右認定事実に基いて被告人の右所為は常習として行つたものであると認定した趣旨であることはその文言自体に徴し明らかである。而して事実の認定は証拠によるべきことは刑事訴訟法第三百十七条の規定するところであるが、その証拠は必ずしもいわゆる直接証拠のみに限らず、証拠に拠り認定した事実に基いて他の事実を認定することは何等採証の法則に違反するものではないから、原判決が証拠能力なき証拠を事実認定の資料としたとの論旨は理由がない。

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