東京高等裁判所 昭和30年(う)2075号 判決
被告人 入山敏夫こと方万兆
〔抄 録〕
検察官の控訴趣意第一、及び答弁書一、二点について。
原判決が被告人は法定の除外事由がないのに免許を受けないで第一、昭和二九年一一月四日頃龍ケ崎市米町四〇七四番地の自宅においてアルコールを原料として湯及び活性炭を混和してこし焼ちゆう約六斗位(アルコール分一六、五度乃至二四、五度)を製造し、第二、同年一二月上旬頃前同所において前同様の方法を以て前同焼ちゆう約五斗八升(アルコール分一六、五度乃至二四、五度)を製造したものであるとの公訴事実に対し、被告人の製造した溶液が酒税法第三条所定の焼ちゆうである点につき(同法第四三条第三項のみなし製造をしたものとしてもその原料となつたアルコールが酒類である点につき)、その証明が十分でないとして無罪の言渡をしていることは所論のとおりである。しかし所論指摘の昭和二九年一二月二一日附龍ケ崎税務署収税官吏大蔵事務官森田徳義作成の現行犯調書、同日附同人作成の捜索顛末書、同日附同人作成の差押顛末書、同年一二月二二日附同人作成の保管証、同月二五日附関東信越国税局間税部鑑定官室大蔵技官池田瑛作成の試験成績書、同月二二日附海老原登作成の申述書、同月二一日附龍ケ崎税務署収税官吏大蔵事務官森田徳義の被告人に対する質問顛末書、被告人の検察官に対する供述調書及び被告人の原審公判廷における公訴事実はそのとおり間違いない旨の供述竝に当審の事実取調における昭和三〇年七月五日附関東信越国税局間税部鑑定官室大蔵技官池田瑛同大塚泉作成の鑑定書、当審証人池田瑛、同平田秀雄、同金岡栄一の当公廷における各供述を綜合すれば、被告人は昭和二九年一一月上旬金岡栄一からアルコール分九〇度以上の紫色のアルコール一斗罐入り二罐(合計約二斗)を買い受け、免許を受けないで自宅で同月四日頃これに湯水をアルコール一斗に対し湯水約二斗の割合で混合し且つそれに少量の活性炭を入れ、混和した溶液が冷却してからこれを脱脂綿及び綿でこしてアルコール分一六、九度乃至二四、五度位の酒類約六斗を製造し、その約二〇日後に金岡栄一から前同様のアルコール一斗罐入り二罐(合計約二斗)を買い受け、免許を受けないで自宅で、同年一二月上旬頃これを原料として前同様の方法で前同様のアルコール分を含有する酒類約五斗八升を製造したことを認めるに十分であるから、被告人の右二回に亘る酒類の製造は酒税法第四三条第三項にいわゆる焼ちゆう甲類のみなし製造に該当するものといわねばならない。しからば被告人に対する本件公訴事実中前記第一、第二の事実は焼ちゆう甲類のみなし製造としてその証明十分であるに拘らず、その証明が十分でないものとして無罪の言渡をした原判決は事実を誤認したものであり、この事実の誤認は判決に影響を及ぼすことは勿論であるから、検察官の論旨は理由がある。
(近藤 吉田作 山岸)