大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和30年(う)2619号 判決

被告人 下山義吉

〔抄 録〕

弁護人の論旨第一点について。

原判決が罪となるべき事実(二)として、「被告人は同日(昭和三十年六月十二日)午前一時五十分頃同市(大田原市)薄葉千二百九十九番地松本幸一方において、金品を窃取しようとしたが、家人に発見されて之を遂げなかつた」と記載し、右事実に対し刑法第二百四十三条第二百三十五条を適用していることは、所論の通りである。然し有罪の言渡をするには、罪となるべき事実として、その適用する刑罰法令各本条所定の犯罪の構成要件に該当する具体的事実を明白にしなければならないものと解すべきところ、原判決引用の関係証拠を綜合して考察すれば、叙上の具体的事実を明認し得られないわけではないのに拘らず、原判決が前記の如く、単に金品を窃取しようとしたと抽象的に判示したのみで、窃盗罪の実行の着手に該当する具体的事実を判示することなく、被告人に対し窃盗未遂罪の罰条を適用して処断したのは、理由不備の違法があるものと云わなければならないから、原判決は破棄を免れない。論旨は理由がある。

註 当審の認定した罪となるべき事実

被告人は

第一 昭和三十年六月十二日午前一時三十分頃窃盗の目的で、栃木県大田原市薄葉千三百四十九番地蛭田束方居宅十五畳の間に故なく侵入し

第二 同日午前一時五十分頃同市薄葉千二百九十九番地松本幸一方中六畳の間に於て、金品を窃取しようとして、同所に置いてあつた箪笥の抽斗内を物色したが、目覚しいものが発見されなかつたため、窃盗の目的を遂げなかつたものである。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!