大判例

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東京高等裁判所 昭和30年(う)3072号 判決

被告人 田中民彌

〔抄 録〕

弁護人の控訴趣意第三点について。

論旨は、被告人は本件犯行当時飲酒酩酊の末心神耗弱の状態に在つた旨主張するものである。よつて按ずるに、所論援用の各証拠及び当審における証拠調の結果に依れば、被告人は当日午後三時頃から焼酎を飲酒し続け、同日午後九時過頃本件杉山方に到りさらに焼酎を飲酒し、午後十時過頃同家を立去る頃は殆んど口もきけず、歩行も満足に出来ず、同行の望月三男に助けられて辛うじて帰途についた程であり、泥醉の状態に在つたことが認められ、その後約三十分の後被告人が本件犯行に出でたものであつて、もとより被告人はかねて本件ダイナマイトの威力も知悉しており、しかもこれを以て右杉山昭等に対し危害を加うべき程の深い怨恨は存しなかつたのであり、被告人の従来の性質素行、経歴等に徴すれば右は全く泥醉の末心神粍弱の状態に在つた結果あえて本件犯行に出でたものと認めるのを相当とする。されば、原判決がこの点を看過し、この点に関する弁護人の主張を容れなかつたのは、すなわち事実を誤認したものというべく、この誤が判決に影響を及ぼすことは明らかであるから、原判決はこの点において破棄を免れない。論旨は理由がある。

同第六点について。

論旨は、原判決は刑事訴訟法第三百三十五条第二項に違反し、判断を示さない違法がある、と主張するものであるが、弁護人の主張は要するに本件危害目的の不存在を主張し本件起訴にかかる爆発物取締罰則第一条違反の罪の成立を否認するものであつて、刑事訴訟法第三百三十五条第二項の法律上犯罪の成立を妨げる理由又は刑の加重減免の理由となる事実上の主張に該当しないことは明らかであるから、原判決がこれに対する判断を示さなかつたのは、もとより当然のことといわなければならない。論旨は理由がない。

(花輪 山本 下関)

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