東京高等裁判所 昭和30年(う)3084号 判決
被告人 坂爪豊次
〔抄 録〕
控訴趣意一、二、について。
原判決の挙示する証拠によれば原判示事実はすべてこれを肯認するに十分であり、記録に徴するも、所論の如く原判示(一)の飲食物は単に、当日被告人方で開催された居部落農家組合役員会議及び隣組長会議に際し、新規役員の就任を見たため従来の慣例によりこれを祝して酒食を提供したに止まり、選挙運動に関係のないものであるとの事実を認めるに足る証拠はない。また、原判示(二)の飲食物の提供が慣例的に選挙事務所開設祝賀の意味を兼ねて行われたものであるとしても、叙上の如く被告人の選挙運動に関して行われたものであることが認められる以上、公職選挙法第百三十九条に触れることはいうまでもない。而して同法条の律意は同法第二百二十一条の場合におけると異り当選を得若しくは当選を得しめる等の目的が無い場合でも選挙運動に関してはいかなる名義を以てするも(尤も同法条但書の場合を除く)飲食物の提供を禁止している趣旨であるから、仮りに所論の如く原判示(二)の場合における飲食物の提供は、被供与者全員が、右選挙において候補者たる被告人を支持する同志であつたとしても被告人の右所為は同法条に触れるものといわねばならない。されば原判決が原判示(一)(二)の各所為に対し、それぞれ公職選挙法第百三十九条第二百四十三条第一項を適用(判示(一)の所為についてはこの外同法第百二十九条第二百三十九条第一項をも適用)して処断したのは正当であつて、原判決には、何等所論の如き事実誤認ないしは法令の適用違反の過誤はない。論旨はいずれも理由がない。
(三宅 河原 遠藤)