大判例

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東京高等裁判所 昭和30年(う)309号 判決

被告人 天野章

〔抄 録〕

控訴趣意第一点について。

しかしながら、罰金等臨時措置法は、終戦後の経済事情の変動、とくに、いちぢるしい貨幣価値の低落に伴う罰金及び科料の額等の引き上げに関する特例として定められたものであつて、同法第二条第一項の規定は、刑法第一五条の罰金の寡額を一、〇〇〇円に引き上げたものであるから、別個の法律で一時特例を設ける方法によつて刑法の右規定を改正したのと同一の結果というべきである。しからば、刑法又は他の刑罰法規において法定刑として罰金の存する法令を適用するに当つては、右措置法の規定をも併せて示すべきものであつて、法定刑が懲役と罰金の選択刑の場合において罰金刑を選択しないときには右法規の引用はその要なきものであるとか、又右特例法規は刑法総則的な規定であるからとくにその挙示を要しないとの見解には賛同できない。なんとなれば、右法規を適用することによつてはじめて罰則の法定刑の内容を確実に知り得るのであつてこれなくしては罰金の寡額が一、〇〇〇円であることは知るに由なく、正当な罰則の適用とはいえないからである。本件についてこれを見るに、原判決が公職選挙法第二三九条第一号及び同法第二二一条第三項第一項第一号の各罰則を適用するに当つて罰金等臨時措置法第二条をも併せて示したのは右説示によつて明らかなごとく法令の適用としてまことに正当であつてこれを非難する所論は独自の見解に過ぎないものというべく採用すべきではない。また原判決が法定刑中いずれも懲役刑を選択したことも判文上明白であつて、所論のごとく措置法規を適用しているからといつて罰金刑を選択したものと疑う余地は全くない。かくして原判決には所論のごとき理由を附せず又は理由にくいちがいがある違法が存するものでないから論旨は理由がない。

(中野 尾後貫 堀真)

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