東京高等裁判所 昭和30年(う)3463号 判決
被告人 児島博
〔抄 録〕
原判決の認定した事実並びにこれを認めた各証拠によれば被告人が配布させた本件「山脈文化」第十九号なる文書は表面冒頭に判示衆議院議員選挙に際し長野県第一区から立候補した倉石忠雄の氏名及び写真を掲げ同人が保守合同により政局の安定を図るべく努力していることを報道し同人の政見等を内容とする座談会の記事を掲げ今次の選挙において倉石忠雄が再び当選することは国家の為郷土の為になると信ずるとの趣旨を記載しているのであつて、これらの記事によれば右文書は右選挙に際し同候補者の当選を得しめる目的で作成されたものと認められるのであるから、それ自体公職選挙法第百四十二条にいわゆる選挙運動の為使用する文書に該当するものと認めるのが相当である。右文書が同法第百四十八条により選挙運動の制限より除外さるべき文書に該当しないことは本件記録に徴し明白であり、又右文書の編集担当者又は経営担当者が同法第二百三十五条の二の規定により処罰されると否とは本件とは別個の問題であつて、これが為本件犯罪の成否に消長を及ぼすものではない。次に被告人が本件の文書が選挙運動の為に使用する文書に該当することの認識があつたと認められることは、右文書の内容が前示のようなものであること、原判決説示のように被告人がその記事内容を認識していたものと認められること、被告人が当時中野市議会議員であり選挙運動に経験を有するものであること、被告人が本件文書を原判示のように投票期日に切迫した日時にその選挙区内に配布させたこと等の事実に徴しその証明は十分である。従つて原判決の認定は相当であつて、所論は独自の見解に立脚して原判決を攻撃するものであるから、これを採用するを得ない。
(谷中 坂間 荒川)
註 本件破棄は量刑不当。