大判例

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東京高等裁判所 昭和30年(う)799号 判決

被告人 近藤栄 外三名

〔抄 録〕

弁護人の控訴趣意第二点について。

所論は、本件はいずれも親告罪であるのに、告訴が取り消され又は適法な告訴がないのに起訴されたものであるから、不適法であると主張するのであるが、被害者とその法定代理人とは各独立に告訴権を有するものであるから、法定代理人の告訴又は告訴の取消は被害者の告訴権に消長を及ぼすものではなく原審証人染谷トクエ、同上原百子、同上原あさの各証人尋問調書並びに同人等の検察官に対する各告訴調書によれば、昭和二十九年三月三日前橋地方検察庁受付にかかる各被害者並びに親権者等連名の告訴取下書(記録三三一丁)は本件被害者染谷トクエ、上原百子、上原あさの等の不知の間に作成されたものであつて、これを以て本件被害者等が告訴の取消又は告訴権の抛棄の意思を表示したものとは認められないのみならず、その後染谷トクエは同年三月十一日、上原百子、上原あさのは各同年三月十日検察官に対しそれぞれ適法に告訴をしていることが明らかであるから、本件は右被害者等の告訴に基き適法に公訴の提起があつたものと認めることができる。尤も染谷トクエの母染谷けさの司法警察員に対する昭和二十九年二月二十日附口頭告訴調書には、右けさが被害者トクエの代理として告訴する趣旨の記載があるが、原審における右染谷けさの証人尋問調書によれば、前記昭和二十九年三月三日検察庁受付の告訴取下書における同人の記名押印は、同人の夫染谷一松が右書類は裁判所から来た書類であると誤信して妻けさの名を記して押印したものに過ぎず、これにより染谷けさ自ら又はトクエの代理人として告訴取下の意思表示をしたものでないことが認められるから、これを以て、被害者染谷トクエの検察官に対する前記告訴が告訴取消後の不適法な告訴であると認める事由とするに足りない。また昭和二十九年三月六日附染谷トクエ、染谷一松、染谷けさの連名名義の証明書(記録第三四二丁)同日附上原百子、上原新七、上原ゆき連名名義の証明書(記録三四三丁)にはいずれも前記告訴取下書が真意によるものである旨の記載があるが、右記載は前記各証拠と対比し染谷トクエ、上原百子に関する限りにおいては真実に合しないものと認めるのが相当である。また当審における証人上原百子の供述中同人が昭和二十九年二月頃附近の民家で警察員の取調を受けた際口頭で告訴をした旨の供述部分は曖昧であつて、これを以て当時適法な告訴がなされたものとは認め難く、その他本件記録並びに当審における事実の取調の結果に徴するも本件が適法な告訴がないに拘わらず起訴されたもので不適法なものであると認めるに足る証左はない故に論旨はすべて理由がない。

(谷中 坂間 荒川)

註 本件破棄は量刑不当。

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