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東京高等裁判所 昭和30年(く)65号 決定 1955年10月18日

本籍並住所 埼玉県○○市大字○○○○○番地

農業 T 昭和十三年一月二十九日生

抗告人 少年並法定代理人

主文

本件各抗告を棄却する。

理由

本件抗告理由の要旨は、

(一)  少年Tは昭和三十年五月の試験観察決定後は忠実に遵守事項を守り善行を積み来つたものであるが偶試験観察前の犯行発覚し、それが、試験観察中に犯行を重ねたもののように誤解され、中等少年院に送致する決定をされたものである。しかしそれは原裁判所の誤解であるのみでなく、右犯行は共謀者にそそのかされたものを単独犯行と誤認されている。

(二)  原審の審判期日の通知が前日に為されたために附添人松永東は期日に出頭できなかつたし、保護者は出頭したがドモリのため少年の利益を主張する十分な機会を得られなかつた。

よつて更に審理の上より寛大な決定を求めるというのである。

記録を調査するに、少年Tは浦和地方裁判所少第三二八八号窃盜保護事件で、同年十二月二十日既に試験観察に付する決定があつたもので所論の昭和三十年五月二十日の試験観察決定は二度目の決定であること記録上明白であり、

しかも少年は最初の試験観察決定後再度の試験観察決定までの間に原決定に記載されているような犯行をくり返したことが認められるのであり、その他原決定には所論事実の誤認はない。なるほど原審の昭和三十年八月十三日の審判期日に附添人たる弁護人松永東、名尾良孝、井上光はいずれも出席しなかつたし、同弁護人に対する期日の呼出状はその前日十二日に送達されていることは所論のとおりであるが、附添人に対する呼出が為されている以上、それが前日に為されているからとて違法ではないし審判期日に附添人の立会がなければ審判を行うことができないとする規定は存しないから原審が附添人の出頭なしに審判したことを違法とすることはできない。その他記録に徴し認められる少年の性格、非行歴、家庭環境等を考量し、原決定の処分は正当で著るしい不当があるとはいえないから、論旨はいずれも理由がない。

よつて本件抗告は棄却すべきであるから少年法第三十三条によつて主文のとおり決定する。

(裁判長判事 近藤隆蔵 判事 吉田作穗 判事 山岸薫一)

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