東京高等裁判所 昭和30年(け)27号 決定
そこで当庁昭和三〇年(お)第一二号再審請求事件記録を調査すると、申立人は、さきに申立人が強盗殺人被告事件について当庁で言渡された控訴棄却の裁判に対し、昭和三〇年一〇月四日当庁に再審の請求をなし、右事件は同庁第三刑事部に係属したこと、同裁判所は同月二四日申立人に対し、同年一一月一〇日までに意見書を提出すべき旨の書面を発し右書面は同月二六日申立人が在監中の宮城刑務所長に送達されたこと、これに対し申立人は同年一一月七日病気を理由として意見書提出の期間を同年一二月一〇日まで延期されたい旨の書面を提出したのみで、意見書を提出しないうちに、同年一一月二五日同裁判所は再審請求棄却の裁判をした事実を認めることができる。申立人は右の事実に基き、原裁判所が申立人の意見を聴かないで裁判したのは不法であると主張するものであるが、刑事訴訟規則第二八六条に「意見を聴き」とあるのは、意見を求めること、即ち陳述の機会を与えれば足りると解するのを相当とするところ、原裁判所が定めた意見書提出のための猶予期間は前記のように約二週間の余裕を存していたことが認められるから、同裁判所は申立人に対し、適法に意見陳述の機会を与えたものと認むべく、従つてこれに対して申立人から意見の陳述がなされなくても、裁判所は再審の裁判をすることができるものといわなければならない。