大判例

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東京高等裁判所 昭和30年(ネ)2430号 判決

控訴人主張の本件約束手形は、訴外生沼曹喜が手形振出日である昭和二十八年十二月二十四日に事実上作成振り出したものであること、及び当時被控訴人が権利能力なき社団である国際技術協力協会の代表者として会長の職にあり、右生沼は事務局長の職にあつたことは当事者間に争がない。

ところで右生沼曹喜に当時被控訴人に代つて本件手形を作成して振り出す権限があつたか否かについて按ずるに、証拠を総合すれば、次のような事実を認定することができる。すなわち前記協会は、内外を通じ経済文化の建設と生活の向上に対する科学技術による協力をなすことを目的として昭和二十八年一月頃設立せられた、いわゆる権利能力なき社団であり、被控訴人はその会長として協会の代表者となり、訴外生沼曹喜は事務局長として理事長の指揮監督の下に協会の事務を処理する責任者となつた。右協会の運営に必要な経費は、原則として会員の会費によつて支弁されることになつていたが、不足勝であつたので、一般の寄附金や会長、理事長等からの個人的出捐によつて補われるのが常態であつて、これらに関する事務を含めて協会の平常の事務は事実上専ら生沼が独断専行していたのが実情であつた。然しながらそれは飽くまで理事長の指揮監督の下に事務を処理するという原則の範囲内において行われたものであり、たとえ協会として必要な金員の支払、または経費の入手等のためであつても、事務局長の生沼に、会長である被控訴人や理事長に代つて同人らを協会の代表者とした手形はもちろんのこと同人らの個人名義の手形を作成振り出す権限は全くなかつた。それにも拘らず生沼は、昭和二十八年十二月二十四日被控訴人には何等はかることなく、全く独断で、振出人として「東京都港区芝愛宕町一丁目七 国際技術協力協会 会長」なる肩書附の被控訴人氏名のゴム印を使用して本件約束手形を作成し、かねて協会の事務処理の必要上自ら保管していた同協会々長名義の印章を振出人名下に押捺し、これを訴外近藤に交付して割引を依頼したものであつて、本件手形は全く被控訴人において生沼にその振出を命じたことのないのはもとより、生沼には被控訴人に代つてかかる手形を振り出す何らの権限もないのに右生沼が擅に作成振り出した手形であることが明白である。

以上のとおり認められるのであつて、これら認定事実よりすれば、前記協会々長には本件手形の支払義務なきこと明らかであるから、控訴人の本訴請求は失当であるとして本件控訴もこれを棄却した。

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