東京高等裁判所 昭和30年(ネ)25号 判決
而して成立に争のない甲第三号証の一、二によれば、被控訴人が三和銀行三河島支店を通じて右(三)の手形をその満期の翌日たる昭和二九年三月一日支払場所に呈示して支払を求めたが拒絶されたことを認めることができる。しかし前記(一)及び(二)の手形について呈示をしたとの被控訴人の主張事実はこれを認めるに足る証拠はない。尤も成立に争のない甲第一、二号証によれば、控訴人が前記(一)及び(二)の手形にいずれも拒絶証書作成の義務を免除する記載をなしていることが認められ、被控訴人はこれをもつて右各手形呈示の事実が推定せらるべきものであると主張する。しかしながら、拒絶証書は所謂遡及権行使のための制度であるから、拒絶証書の作成を免除することのできる者は償還義務者に限るものというべきである。然るに約束手形の振出人は、為替手形の引受人と同じく、絶対的に手形金を支払うべき債務を負担しているもので、償還義務を負う者ではないから、自己の義務に関して拒絶証書の作成を免除しても全く無意義であるといわなければならないし、償還義務者に対する権利行使について手形呈示の事実を推定しうべき旨の手形法第四六条第二項(手形法第七七条によつて準用)は約束手形の振出人にはその準用がないものと解すべきである。従つて本件約束手形の振出人たる控訴人のなした前記拒絶証書の作成免除の記載はその効力がないものといわなければならない。